「漢方薬」というラベルの力

漢方薬というのは、我々日本人にとっても非常に馴染み深いものではある。
テレビなどで風邪薬のCMをやっていたりすると「漢方エキス配合」とか、その手の言葉をよく聞いたりする、という意味でだ。


ところがこの漢方薬という代物はなかなかの曲者で、いわゆるところの疑似科学の側面があったりする。
あらかじめ申し上げておかなければならないのは、「漢方薬は効かない」と言いたいわけではなく、「漢方薬の中には実際に効くものもあるかもしれないが、かなり多くのものについては効くという根拠が得られていないにもかかわらず、かなり多くの人がその薬効を信じている」ということを言いたいわけだな。


漢方薬の多くについてそれが「薬である」とされるのは古典によってであり、現在用いられている科学的に薬効を検証する方法である「二重盲検法」をパスできたものはそう多くない。
それどころか、多くのケースにおいて二重盲検法による検査すら行われていない。これは、漢方薬は個々の患者の症例に対応して処方されるので、定量的な比較が難しい、というわりと苦しげな弁明に聞こえんこともない事情によるところもあるようだ。


んで、漢方薬の薬効を二重盲検法でテストしたデータはないものか、という興味をフラっと抱いてWebをさすらってみたところ、ちょっと面白いデータを見つけた。

漢方薬のプラシーボ効果

中ほどにある二重盲検法の結果を見てみると、実際の漢方エキスを投与したケースと、プラセボによるケースの間に有意な差は見られない。
面白いのは陽虚群と陰虚群の実測値においてプラセボのほうが漢方薬の有効率を上回ってしまっている点(ただし、これは「有意差が見られない」と読むべきであり、漢方薬を使わないほうがまし、とはいえない)と、上記サイトの文中にもあるとおり、通常のプラセボの有効率は大抵30%〜50%前後であるものが、いずれも70%近い値になっているところ。


プラセボの場合は実際の薬効成分は入っておらず、この数字は患者の思い込みによる心理効果の値なわけで、薬効成分ではなく「漢方薬」という「ラベルの力」ということになる。


…思い込みってすごいもんだねぇ(笑)