ステレオイヤホンからオーディオネタを連想してみる

iPod のイヤホンがだいぶへたれてきたので、別途購入の品と交換。audio-technica製のATH-C602。主な利用シーンが通勤時なので、大抵取り回しを優先して、ゴツいヘッドホンではなくステレオイヤホンを選択してしまうわけだけど。これまで使ってきた標準のイヤホンよりはちょっと低音が強めに聞こえる。ベースラインとかわりと好んで聴く人間なので、どっちかといえばこっちが好み。


実のところ音質にこだわりのある人間じゃないので、よほど音が軽薄で聞き苦しい代物でもなければそんなに気にしないわけだが、まぁそういうことをちょっと考え始めると、自称オーディオマニアの胡散臭さとかに対する批判が湧き出てきたりするわけだw


まぁ、たとえばどういう音質が好みかなんて、結局リスナーの主観でしかない。ある人に言わせれば「腹に響く重低音」を評価しているところを、別の人は「低音が強調された不自然な音」とこき下ろし始める。「いい音質」なんてものは所詮そんなものだから、金をかけるのは馬鹿馬鹿しいと思っているクチだったりするんだが。


オーディオ雑誌とか読んでも殆どオカルトの巣窟のような感じで、「音質の比較」と称しながら新薬の薬効検査に使われる「二重盲検法」のような、「思い込みが入り込まない方法」をとって書かれた記事など見た事ないぞ。もしあったら誰か俺に見せてくれw


定量的に計測された数値的性能に関しては嘘は無いものとしても、それが「リスナーの嗜好」に合うかどうかは別問題だしな。ものによっては「音質の向上」を謳う疑似科学商品の広告があふれている雑誌すらある。それがプラシーボ効果によるものでないというのは誰か証明できるのか? とか思ったりするわけだ。

ずっと昔「CDを凍らせてから聴くと音が良くなる」とかいうオカルトもあったなw
デジタルメディアから読み取った音声信号に、メディアの温度で違いがあるわけなかろうて。さすがに今これをやっている阿呆はおらんだろうが、氷点下近くまで冷却したものを急に室温の環境に出したりすると結露の原因になる。純朴にもこれを信じた人が、高価なオーディオ機器に冷えたCDを突っ込んで結露で壊したりしてないかとか、結構心配したものだ。



そういえば昔、友人から聞き及んだオーディオ雑誌の読者投稿コーナーでのやり取りの話があったな。確か光デジタルオーディオケーブルに関する話で、こんな内容だったと思う。

高級ケーブルと廉価なケーブルを比較して、デジタル信号の理論上音質に差が出るはずが無いのに、やはり高級なケーブルのほうが良い音に聞こえるのはどうしてか?

…この疑問を抱いた人は、まず自分の感想が主観や思い込みに毒されていないか、というのを疑うべきだったと思うんだな。


自分でケーブルを買い、同じ機器をそれぞれのケーブルで繋ぎ直し、同じ曲を聴き比べたとしても、そのケーブルを付け替えたのが自分であるならば、「今どちらのケーブルを使っているか」という情報を認識した上で音を聞いているわけだから、「音質の違い」という認識がプラシーボ効果によるものである可能性を拭い去ることができない。


この比較実験のある程度正しいと思われるやり方は、以下のとおりだ。

  1. 光デジタルオーディオケーブルを、高級ブランドのものと廉価なもの、あわせて二本を用意する。
  2. 協力者を二人用意する。一人は自分と同じぐらいのオーディオの知識を持った人、もう一人はケーブルのブランドや値段の違いなどわからない素人が望ましい。前者を「博識な協力者」、後者を「無知な協力者」と呼ぶ。
  3. 博識な協力者は、ケーブルの梱包を解き、それぞれのケーブルに A,Bというラベルを貼る。このとき、どちらにどのラベルを貼ったかの情報を、無知な協力者および被験者の両名に知らせてはならない。
  4. 博識な協力者は、二つのケーブルのうちどちらか一本を無知な協力者に渡す。どちらのケーブルを渡したかは覚えておかなければならないが、無知な協力者には教えてはならない。無知な協力者は渡されたケーブルを用いて、実験に使用する機器を接続する。
  5. 被験者が接続された機器で音楽を再生し、その音質を評価する。このとき、二人の協力者のいずれからも、いかなる情報も受け取ってはならない。また、機器を直接目にして現在どちらのケーブルが使用されているかの情報を得ることができないように、目隠しをした状態で音質を評価する。
  6. 以上の実験をある程度の回数行った後に、得られた結果をまとめ、どちらのケーブルがどんな評価を受けたのかを記録する。

これにより、二つのケーブルそれぞれを使用した際の評価に差異があり、その件数に有意な差があれば、ケーブルによる音質の相違を疑うことができるが、その有意差が認められない場合は「単なるリスナーの思い込み」と考えるのが妥当だろうな。


こういうことをやらないで「AよりBの音質がいい」とか騒ぎ立てるオーディオマニアの言うことは、信用しなくてよろしい。今回俺が買った2000円未満のステレオイヤホン程度ならたいしたことはないが、まともにオーディオ機器の類をそろえると尋常ではない額になる。オカルトに付き合って高額商品購入の判断基準にするのは、まともな人間のすることじゃない、と俺は思う。


…いや、オーディオマニアと呼ばれる人間はどこにでもいて、そういうオカルティックな熱弁をふるって機器を勧めたりこき下ろしたりする輩というのが少なくないので、いつか言おうとは思っていたわけだが。