「ツキ」とか「幸運」「不運」などと呼ばれるものの話。

  • ある範囲 1〜n の整数を、乱数としてそれぞれ均等な確率で発生させる乱数発生器があるとする。それぞれの値が出る確率は\frac{1}{n}である。
  • 乱数発生器をT回動作させ、得られた値を順番に記録した数列をRとし、R_{1}R_{T}として表現する。
  • 数列Rから、任意の連続する要素n個を取り出した際に、それぞれの値の頻度が必ず均等になった場合、数列 R はどんな数列か?

…よく、ゲームの乱数について「偏りのない乱数を」などという方がいるが、上の問題を考えてみてもらいたい。


「偏りが無い乱数」というものを考察すると上記の問題のようになるのだが、「どこをとっても偏りのない」という条件を満たすのは、1〜 n の値が一度ずつ登場する特定パターンの繰り返しによる数列以外に有り得ない。
パターン自体はどんなものでも構わないが、途中でパターンが変わるとそこに「偏り」が生じるため、条件を満たさなくなってしまう。


そして、そんな特定のパターンで生成される数を「乱数」とは呼ばない。


つまり乱数とは、局所的に見れば「必ず偏りを内包する」ものなわけであり、「偏りの無い乱数」などというものは「界面活性剤を含まない石鹸」ぐらい有り得ないものだ*1


んで、こうした「乱数の偏り」を、先人たちは「ツキ」とか「幸運」「不運」などと呼んできた。まぁ先人たちの誤謬は、何の善意も悪意も持たぬ確率の結果を「神の意志の顕在」と勘違いしてきたことなわけだが。

*1:石鹸は、脂肪酸ナトリウムなどの界面活性剤そのものの塊