生まれる前の物語

以前、Y.アルツタノフの記事のために買った「SFマガジン」1961年2月号を隅々まで読んでみると、そこには新しい驚きがあった。

「われはロボット」の中の一篇「うそつき!」が収録されていたり、その訳者・小尾芙佐先生が別の名前(神谷芙佐)だったり、SFマガジンにおける最初の長編連載の第一回が掲載されていたり、それがR.A.ハインライン著「宇宙の戦士」だったり、しかも訳者が矢野徹先生じゃなく田中融二先生だったりする。

それよりも、途中のコラムに書かれた「去る10月、ケネディ米大統領に当選した」というような、まさにその時代にリアルタイムで書かれた記事があったりする。そうした記事は、雑誌を保存しておくだけで時代の空気のタイムカプセルになるのだということを教えてくれる。

1973年というベトナム戦争すら終ってしまった時代に生まれた私でも、ケネディがいつ大統領に就任して、在任期間中何をやり、その任をどうやって終えた(終えさせられた)かを知ることは出来るが、ケネディの生きた時代の空気を肌で感じたことはない。まぁ生まれてないんだから無理もないわな。
昔の雑誌に掲載されているちょっとした時事ネタの記事は、そんな空気の一端を感じさせてくれるような気がする。