「けいおん!」第九話(含ネタバレ)

前回八話のレビューが遅くなったのと同様、第九話のレビューも結局第十話放映日になってしまった。このところ、約一週間かけて一話分のレビューを書いている気がする。わざわざこんな長文を読んでくださっている方には遅筆で申し訳ない限りだ。


なんというか、もうちょっと落ち着いてレビューを書けるような状況になると助かるのだが。


なお、過去の放映回についてのレビューはこちら。

第一話感想 第四話レビュー 第七話レビュー
第二話感想 第五話レビュー 第八話レビュー
第三話レビュー 第六話レビュー

1〜2話については、漠然とした感想の体をとっています。

アバンタイトル

唯「軽音楽部に、待望の入部希望者がやってきました!」

前回、新入部員獲得競争で散々苦労した軽音楽部。
その軽音部に新たな入部希望者がやってきた。


嬉しさのあまり取り囲んで質問攻めにする唯、紬、律。
そんな三人を冷ややかにたしなめる澪。


このニューフェイスが、軽音部に何をもたらすのか、
また、彼女は軽音部に何を感じるのか──

OP

今回第九話のOPから、梓が加わるという変化がある。
冒頭の楽器がクローズアップされるカットで、これまでギターは唯のレスポールだけだったが、梓のギター "Fender Mustang" が加わった。


また、音楽室や校門前での演奏カットでも梓が加わったり、メンバー紹介カットも追加されている。第4話レビューのおまけで書いたとおり、これまで発表されてきた楽曲はギターパートが二つあるので、こうして梓を加えることで映像が完成すると言うこともできる。演奏カットではリズムギターを担当しているようだが、梓のメンバ紹介カットが出るBパートに、従来のOPでは無かったリードギターが1パート追加されている。また、梓が登場するカットで使用しているギターの全貌を確認することができる。


コンペティションライン*1は無し、マッチングヘッド*2の "Mustang '69 Old Candy Apple Red"(MG69/OCR)。

参考:Fender Japan "Mustang"
http://www.fenderjapan.co.jp/fender/2008fender/mustang.htm

数々の優れた設計を持つ伝説的ギターやベースを生み出した Fender創始者レオ・フェンダー(1909-1991)が、この Mustang を設計する際にこだわった、


「立ってギターを斜めに構えた時に、美しいシルエットになるデザイン」


というコンセプトの具現体。


本家 Fender USA は、もはやこの Mustang の生産をしておらず、現在これを生産しているのは 日本法人の Fender Japan である。Fender USA によって生産された頃の、ビンテージの Mustang を手に入れようとすれば、やはり20万円級の価格でもおかしくないが、Fender Japan の現行製品として生産されている Mustang ならば 84,000円。市場価格だと、新品でも7万円前後で買えるので、本当に高校生の経済力でもバイトすれば買えんこともない現実的な価格帯の楽器。先輩方の破綻した金銭感覚とは大違いだw



自己紹介

梓「えっと、1年2組の中野梓といいます。
 パートはギターを少し…」
律「あっ、唯と一緒だな!」
梓「よろしくお願いします、唯先輩!」

入部希望者の自己紹介。台詞にもあるように、彼女の名は「中野梓」、ギタリストだ。後輩からの「唯先輩」という言葉に感じ入る唯さん。妙な感動のあまり、花を散らしながら自分の世界にしばし浸るw

律「おーい、帰ってこーい…」


ここでサブタイトルコール。

唯「とりあえず、なんか弾いて見せて?」

梓がギタリストだとわかった唯さん、自分のレスポールを彼女に差し出す。梓はストラップに肩を通し…

梓「まだ初心者なので下手ですけど…」
唯「大丈夫! 私が教えてあげるから!」
澪「おっ 早くも先輩風吹かせてるな!」

偉そうに胸をポンと叩いて構える唯さん。


…おーい、まだ初めて一年程度だろw
アニメの唯さんは俺とギター歴大差ないぞw
まぁ、俺よりは真面目に練習しているほうだがw

梓「そ、それじゃぁ…」

軽くフレーズを弾いてみせる梓。
このとき、軽音部員たちはギターを弾く梓にジミー・ペイジの姿を見た!

参考:ジミー・ペイジ - Wikipedia
ちなみにジミー・ペイジは、唯と同じギブソンレスポールを使うことで知られる。
梓はここで唯のレスポールを借りているので、とても良くイメージが伝わる。

…どうでもいいが、このイメージ映像のジミー・ペイジツインテールが生えてるんだがw おまけに隣のロバート・プラントにもツインテールがwww

参考:レッド・ツェッペリン - Wikipedia

それほどまでに、唯さんをはるかに上回るテクニック。ついさっき大見得を切った唯さんは…

澪「う、上手い…」
唯「私より断然…!」

…まぁ、実際にちょっと楽器かじると、自分を上回るプレイヤーを目の当たりにして、愕然とすることはよくある話。フレーズが終わり、先輩たちを見た梓。さっきとまるで違う雰囲気に…

梓「(あ、あれ? どうしよう、
  なんだか変な雰囲気…やっぱり私の演奏が下手だったから?)」

事実はまるで逆で、現時点でテクニック面では彼女が軽音部最高のプレイヤーであるわけなんだが、新歓ライブの感動覚めやらぬままの梓、逆の想像をしてしまっている。

梓「ごめんなさい! やっぱり聞き苦しかったですよね」
澪「あぁ、いや、そういうわけじゃ…」
唯「ま、まだまだね!」
澪/律/紬「えぇ〜っ!?」

…この期に及んで見栄を張る唯さん。あんまり見栄を張ると後が苦しくなるばかりなんだが、どうしても先輩風を吹かせたいらしい。そんな事情も露知らぬ梓は目を輝かせ…

梓「私、もう一度唯先輩のギターが聴きたいです!」

唯のギターが聴きたいとせがむ。新歓ライブの感動によるフィルタがずいぶんと強いようで。しかし、明らかに自分より上手い後輩に対して見栄を切ってしまった唯さんは…

唯「うっ…ライブでぎっくり腰になったからまた今度ね」
澪「(苦しい…)」

苦しすぎる言い訳で逃げる。
さっきまで普通に動いてたじゃないかw

律「もういいから、どいてろ!
  あー…とにかく、入部してくれるってことでいいんだよね?」
梓「はい! 新歓ライブでのみなさんの演奏を聴いて感動しました!
  これからよろしくお願いします!」
唯「うぅっ…眩しすぎて直視できません…」

頼りなさ過ぎる唯をほっといて、部長・律ちゃん、話を進める。
今回の唯さん、前回のさわちゃん並のダメキャラですw

梓「あ、そうだ…(ポケットを探り)入部届けです」
律「確かに受け取ったから。明日っからよろしくね!」
梓「あ、はい。それじゃあ失礼します」

梓は律ちゃんに入部届けを出し、今日のところは音楽準備室を辞する。
どうでもいいが、これまでの経緯から事務処理の苦手な律ちゃん、部活申請用紙とかステージ使用申請みたいに、梓の入部届けの処理、忘れんようになw


梓を見送った軽音部員の二年生4人。その姿が見えなくなった後…

唯「…わ、私どうしよう!?」
律/澪「練習しとけ!」

はい、そうですね。上達するには練習以外の方法はありません。
まぁ、がんばれ。ついでに俺も練習しろw


期待の初日は…

梓「こんにちはー!」
律「おっ 元気一杯だな!」
梓「はい! 放課後が待ち遠しかったです!」

翌日、自分のギターを納めたギグバッグを背負い、音楽準備室の扉を開いた梓。

律「それじゃあ早速!」
梓「練習ですか!?」

目を輝かせ、憧れを抱いたステージに立っていた先輩たちとの練習を期待する梓。ところが…

律「…お茶にするか」
梓「えぇっ!?」

…えぇ、まあこれが軽音部の実態ですw


梓の前にムギちゃんがティーカップを置き、紅茶をすすめる。

紬「梓ちゃんもどうぞ」
梓「あ、あのー…音楽室でこんなことして、大丈夫なんですか?」
律「大丈夫大丈夫!」

…いいのか、それ?
と訊くのも野暮なほど、軽音部は過去一年こんな活動実態を繰り返してきたわけだがw


そこに入ってくる、顧問・さわちゃん。
教師の登場に、一瞬身を硬くする梓だが…

梓「あの…あの、これは…」
さわ子「私ミルクティーね」
梓「えぇっ!?」

何事もなく自然にムギちゃんに対してミルクティーを注文する顧問の姿に驚愕する梓。
まぁ、わからんでもないw


感動のステージを演出した軽音部。その実態に衝撃を受けた梓。
初日の活動は…皆でお茶を飲むこと。

さわ子「顧問の山中さわ子です。よろしくね」
梓「よ、よろしくおねがいします…」
さわ子「(ネコミミとか似合いそうね…)」

先ほど入ってきた顧問・さわちゃんの自己紹介。
もちろんこの段階では、その素性について知る由も無いわけで、見た目にだまされかける梓。しかし、さわちゃんは既にロクでもないことを考えているw


梓の様子などお構い無しに、いつもと変わらず談話しながらケーキとお茶を楽しむ軽音部員の二年生達と顧問。梓はどうしたものかと様子を見ていたが…

梓「(ここ、軽音部だよね…
  はっ!? もしかして、私の自主性が試されてるのかな?)」

もちろんこの連中がそんなことを考えているわけが無いのだが、実態を知らない梓は自分のギグバッグから愛用のムスタングを取り出し、練習を始めようとする。彼女がチョーキング音を鳴らした瞬間

さわ子「うるさーい!」(デスボイス)

いきなりメタルモードになり一括するさわちゃん。
全員が呆気にとられ…

律「さ…さわちゃんのアホー!!」
さわ子「だって…静かにお茶したかったんだもん…」
律「言い方ってもんがあるだろ!」

怯えうずくまって泣き出してしまった梓を、澪さんが慰める。

澪「ごめんなー。あの先生ちょっと変なの」
さわ子「おい…」

いや、まったくその通りなんだがw
ムギちゃんも唯さんもフォローするがその方向性がケーキを食べようというものなので、なんかずれてる。そして…

紬「…梓ちゃん?」
梓「こんなんじゃダメですー!」
澪「おおっ キレた!?」

突然立ち上がり、キレる梓。

梓「皆さんやる気が感じられないです!」
律「あ、いや、新歓終わった後だったし…」
梓「そんなの関係ありません!
 音楽室を私物化するのも良くないと思います!
 ティーセットは全部撤去すべきです!」

涙目になるムギちゃんの反応が面白いが…

さわ子「(泣きながら)それだけは勘弁して…」
梓「なんで先生が言うんですか!」

本来ならば生徒を指導すべきはずの教師であるさわちゃん、この台詞で一層ダメ度が増している。怒りのあまりまくし立てる梓だが…


その梓を後ろから抱きしめる唯さん。そのまま優しく頭を撫で…

唯「いい子いい子…」
澪「そんなことでおさまるはず…」
(梓、柔和な表情)
澪「おさまったーっ!?」

このシーンにおける梓の反応は、第二話の最後で、買ったばかりのレスポールのピックガードに貼られていたフィルムを律ちゃんに剥がされ、呆然としているところでケーキをすすめられて機嫌を直した唯さんと非常に似ている。軽音部員の素質ありだw


そして…

梓「取り乱してすみませんでした!」
唯「ううん、全然気にしてないから」
梓「えっ…それはそれで…」

唯さん、ちょっとは気にしなさいw
梓の心情がわからんでもない、軽音部最後の良心・澪さんは梓の肩を持つ。

澪「梓の言うことも一理あるよ。
  私達ももっとやる気出していかないと…
  わかりましたね!?」
唯/律「はーい…」

結局、澪さんに怒られてしまう律ちゃんと唯さんだった。

数日後

梓「はぁ…この前迷惑かけたから行きたくないなぁ…」

この前、軽音部の実態にキレて取り乱したことをまだ気にしている梓。音楽室に向かう足取りも重いが…

梓「(全然動じてない…)」

扉を開けると以前と全く変わらず、お茶飲んでお菓子を食べている軽音部の姿。梓の姿を見た唯さん、律ちゃん、ムギちゃんの三人の動きがしばし止まり…あわてて唯さんはレスポールを掴んで肩にかける。

唯「い、今から練習するところだったんだよ? ホントだよ!?」

どう見ても慌てて取り繕っているようにしか見えない。
ともあれ、お茶の席から立ち上がり、「ふんす!」の台詞とともに練習を始めるそぶりを見せる唯さんだが…

唯「やっぱケーキ食べないと力が出ないよ〜」

内海賢二の声をした直立歩行の虎が現れそうな台詞とともに、ほとんど弾かないうちにその場にへたり込んでしまう。なんとなくわざとらしく見えなくもないがw

参考:Home | Kellogg's
商品名がいつの間にか変わっていたんだな。知らんかった。

そこにムギちゃんが一口ケーキを食べさせた途端に立ち上がる唯さん、オーバードライブをかけないクリーンサウンドで、軽快なカッティングフレーズを披露する。

梓「(う、うまーい!?)」
唯「梓ちゃんも食べてみなよ。おいしいよ〜?」

このときの唯さんの目は、何かを企んでいるようにも見える。
レスポールを肩にかけたまま、一口分のケーキを刺したフォークを持ち、梓に迫る唯さん。薦められるままにそのケーキを口にする梓。

梓「あ、おいしい…」
律「ん? なんだって?」
梓「お、惜しいって言ったんです!」
律「ほほう…」

梓の一言を聞き逃さず、その言質を取ろうとする律ちゃん。梓は何とか言い逃れの言葉を口にするが、ケーキを持ったままの唯さんは、そんな梓をじーっと見ている。


唯さんがケーキを差し出すと、ぱっと明るくなる梓の顔。
逆に引っ込めると名残惜しそうに暗くなる。そんな梓の反応で遊ぶ唯さん。

唯「(おもろい…)」

このあたりは、梓の根の部分は軽音部員の二年生と大差ない、という解釈ができるな。


で、そんな頃。

女生徒二名「先生さようならー!」
さわ子「はい、さようなら」
(女生徒たちを見送る)
さわこ「(はぁ…今日から音楽室でのティータイムは無しかぁ…)」

そんな頃、さわちゃんは廊下で相変わらず猫をかぶって生徒達の挨拶に答えながら、音楽室のティータイムがなくなったことを残念がっていた。これまでの経緯で、軽音部以外でその正体を知るものは和さん、憂ちゃん、そして前回部活見学に来た純ちゃんの三名だけ。他の生徒にはまだ猫かぶりはバレていないらしい。

さわ子「(でも、教師らしくちゃんとしなきゃ! たまには…)」

思い直し、音楽室の扉を開けるさわちゃん。どうでもいいが、たまには、なのかw

さわ子「…って、食べてるじゃん!」

結局もとの木阿弥だった。

新入部員はエリートプレイヤー


ムギちゃんのケーキを一口食べ、窓際から感慨深そうに外の景色を眺めるさわちゃん。

さわ子「…私、もうここで死んでもいい」
律「…死ぬな」

そんなにケーキ食いたかったんかい。
なぜティーセットを撤去しなかったのかというさわちゃんの問いに、梓答えて曰く、

梓「な、何でもかんでも否定するのは、ダメだと思って…」

素直に自分も食べたいと言えないw
とにかく、今日のお茶は和やかな雰囲気で進んでいる。
ここぞとばかりに、梓の楽器経験の話に持っていく唯さん。いや、多分計算などしておらず、純粋な興味からなんだろうな。

唯「梓ちゃんて、いつギター始めたの?」
梓「あ…えっと…小4くらいからです。
  親がジャズバンドをやっていたので、その影響で」
澪「へぇ〜」
律「全然初心者じゃないじゃん」

初めて部室を訪れ、唯さんのレスポールを渡されたとき「まだ初心者なので」と前置きした梓だが、既にこの時点における梓のギター歴は小学校4年生〜中学3年までの6年ほど。うむ、俺より長くやってるw 上手いのも無理はない。

で、話を振られた梓。同じギタリストとして唯に興味が沸くのも無理はない。

梓「あ…唯先輩がギター始めたきっかけって何ですか?」
唯「え!? わたし!?」
(口笛を吹いて誤魔化す唯)
唯「(言えない…軽音が軽い感じの音楽だと思ってたなんて言えない…)」

古典的過ぎる誤魔化し方をする唯さん。昔のマンガかお前は(吉田戦車風に)


少なくとも唯を含む4名はその経緯について全て知っている。まさか廃部寸前の軽音部に活動内容を理解しないまま入部した挙句、廃部の危機を免れるためにギターを始めたなどと、小学生の頃からずっとギターをやってきて、新歓ライブに感動して入部したという梓を前にして口にできようか(詳細は第一話参照)。

唯「いやー! とにかく新入部員が入ってよかった!」
律「(誤魔化した!?)」

結局、唯さんはごまかし通す。
しかしながら、入部の経緯に関しては新歓ライブのときのMCで半分ぐらいは言ってしまっているんだが…

イニシエイション…?

さわ子「そうそう! 私、梓ちゃんにプレゼント持ってきたんだった!」

両手をポンと打ち、思い出したように持ってきたアイテムをポケットから取り出すさわちゃん。一体何を…?

梓「…あの…これ、何ですか?」
さわ子「何って、ネコミミだけど?」
梓「いや、それはわかるんですけど…」

さわちゃんからネコミミを渡され、困惑する梓。
その梓の背後に、音もなく回り込むさわちゃん。

律「大丈夫だよ。軽音部の儀式みたいなもんだから」
梓「何の儀式ですか!?」

両肩を押さえるさわちゃんの手を払いのけ、距離を取る梓。
ネコミミをつけるのは恥ずかしい、先輩方だって──と振り向くと、ネコミミをつけて和気藹々と話す二年生たち(澪除く)。予想と反する事態に混乱する梓。

梓「(あれ…? あたしがおかしいの…?)」

いとも当たり前のように、唯さんから手渡されたネコミミをつける羽目になる梓。
意を決してネコミミをつけると…

一同「おおっ!」
唯「すごく似合ってるよ!」
さわ子「私の目に狂いはなかったわ!」

…目に狂いはないかも知れないが、他は色々と狂っていると思うぞ。
しばしの間の後…

一同「軽音部へようこそ!」
梓「ここで!?」

ネコミミをつけた梓の愛らしさにほお擦りする唯さん。愛情表現が前回第八話のアバンタイトルで、桜高に合格した憂ちゃんに見せたものと変わらない。全身でダイレクトに表現する子だな、唯さんは。

律「『にゃー』って言ってみて、『にゃー」って!」
梓「に、にゃー?」

律ちゃんに促されるまま、猫の鳴き真似をする梓。促す律ちゃんと、鳴き真似する梓の手が、招き猫の手になっている。そんな梓の姿に悶える唯、律、紬、さわ子の4名。澪さんはこの輪には加わっていないのに注意。

唯「渾名は、『あずにゃん』で決定だね!」
梓「え…」

よし、ようやく「あずにゃん」の呼び名が出てきた。
以後、本文中でも「あずにゃん」で行く。長かったw


得体のしれない展開に呆然とするあずにゃんを残し、Aパートは終了。


あずにゃんはどうにも押しに弱いようで、こんな風に勢いで攻められると流されてしまう模様。

遠巻きに見ていた者

さわ子「次はこの服よ!」
一同「おおっ!」
さわ子「ネコミミメイド!」
梓「それは絶対嫌です!」

Bパート開始と同時にさわちゃんが取り出したのはメイド服。前回憂ちゃんと純ちゃんの部活見学の際に唯たちが着ていたものとはデザインが異なる。なんか、どっかで見たような気がせんでもないが。大阪日本橋あたりの人たちが着てたのにどことなく似ている…のか? それはともかく。


あずにゃんを中心として騒ぐさわちゃんたちを、少し離れたところから見ている澪さん。

(梓、かわいいな…
いじられる対象が私から梓に移ったのは助かったけど、
でも、この淋しい気持ちは──)

律「──何?」
澪「…さっきから何言ってるのよ!?」

…澪さんのふりをして、その心情を勝手にでっち上げたモノローグを入れる律ちゃん。第五話でさわちゃん相手に見せたナレーションといい、こうした声芸を使うキャラというのは意外に新しいかも知れない。

部活が終わり…

その日の部活が終わった模様。

唯「はぁー楽しかったー!」
梓「練習もしてないのに疲れました…」

…結局練習しとらんのかw
音楽室前の階段の踊り場で集合する軽音部五名。今まさに帰ろうというその時、

澪「あっ…私、音楽室に忘れ物…」
律「じゃあ、先行ってるな」
澪「うん」

何やら忘れ物をした澪さん。一人音楽室に戻り、他のメンバーは先に行く。
澪さんの忘れ物は携帯電話。無事見つけ他の4人の後を追おうとした矢先、その隣に置かれているものを見つける。


先ほど皆であずにゃんにつけて遊んでいたネコミミ。それを見た澪さん、動きが一瞬止まる。しばしネコミミを凝視する。さっきは遊びの輪に加わっていなかった澪さん、なんとなくネコミミを付けてみたい衝動に駆られている様子。そして──


──衝動に負け、誰も見ていないはずの音楽室で一人ネコミミをつけてみる澪さん。
しかし、その様子を先に行ったはずの律ちゃんが隠れて見ていた。

澪「ひ、ヒゲ!」
律「苦しいぞー!」

慌ててネコミミを口ひげのように構えて誤魔化そうとする澪さんだが、誤魔化しきれていない。多分これは律ちゃんの仕掛けた罠に違いない。きっとそうだw

帰り道

唯「ねえあずにゃん
  うちの近くにおいしいアイス屋さんがあるんだよー」
梓「あ…」
紬「みんなでいきましょう?」
唯「先輩がおごってあげる!」
梓「は、はぁ…」
唯「ちがうちがう、返事は『にゃー』だよ。はい、『にゃー』」
梓「に、にゃー?」

唯さん、どうしても先輩風を吹かせたい模様。
挙句、あずにゃんに猫の鳴きまねをさせ、皆でねこかわいがり。
ムギちゃんがねこじゃらしを振っているのが気になるw


アイス屋さんの軒先にあるベンチに並んで座り、アイスを食べる軽音部五名。唯さんお薦めの店は、紬お嬢様にも好評な模様。普段美味いもの食べてるはずのムギちゃんに「ほんとに美味しい!」と言わしめるとはなかなかの店のようだ。


ひとり黙々とアイスを舐めているあずにゃん。その前にしゃがみこみ、視線の高さを合わせて喋る先輩が一人。今まであずにゃんを弄ってあそんでいなかった唯一の先輩、澪さん。

澪「大丈夫? 軽音部、やっていけそう?」
梓「あ…えっと…こののんびりした空気がちょっとアレですけど」

苦笑いしながら答えるあずにゃん。澪さんも苦笑せざるを得ない。

唯「大丈夫、すぐ慣れるよ?」
梓「(…っていうか、慣れたくない)」

割り込むようにあずにゃんの肩に手を置き唯さんは言う。
…いや、そうじゃなくてだなw


緊急会議

音楽室の扉に張り出された一枚の紙。「緊急会議中! 入っちゃダメだぞ!!」の文字が。

律「何? 緊急会議って」
澪「進入部員が入ったのに、いつまでもまったりダラダラしてたらまずいと思うんだよな」
律「ほぅ…」
唯「そ、そうなの?」

…自覚しとらんのかw

澪「このままじゃ梓、辞めてしまうかもしれないぞ!?」
唯「あ、あずにゃんがいなくなるのはいやだ!」
律「仕方ない、何か梓の弱みを…ぁいたいっ!」

あずにゃんの弱みを握ろうとカメラを取り出した律ちゃんに澪さんの鉄拳。手書き風のイメージ映像が出るが、次のカットで頭にたんこぶをつけた律ちゃんが、その絵のかかれたフリップを持っている。漫才かよw それ以前に弱みを握るという発想はやめれw


これまで何となくやってきた軽音部だが、澪さんはちゃんと部活動としての活動計画を立てることを提案。しかし…

律「確かにな…んじゃ、まず…梓の歓迎会をするか!」
唯「いいねー!」
紬「楽しそう!」
澪「っておい!」

いや、そうじゃないんだが。

アウトドア歓迎会

結局流されるままに公園に集まり、レジャーシートの上でお弁当を広げている軽音部。第二話でギターを買うために交通量調査のバイトをしていたときも、お弁当を食べるためにレジャーシート広げてたな、この人たち。こういうの好きなんかな?


あずにゃんを取り囲み、色々お弁当をすすめる唯さんと律ちゃん。律ちゃんがあずにゃんの口にタイヤキを放り込み、その強引さに澪さん怒るが…

梓「んぐっ、んぐっ」
(梓、幸せそうな表情)
澪「タイヤキ…好きなの?」
梓「うん…」(至福の表情)

…タイヤキはよほどの好物のようだ。


しまいにゃ、先輩三人はフリスビーで遊び始める始末。澪さんはその輪に加わらず、静かに本を読んでいる。そしてあずにゃんは、そんな澪を見ながら考えた。

梓「(澪先輩は上手いのに、なんでこんなやる気のない部活にいるんだろう…?)」

あずにゃんの視線に気づいた澪さん。何か訊きたそうにしている梓に声をかける。

澪「ん…何?」
梓「あ…い、いえ…
  あ、あの…澪先輩は、外でバンド組んだりしないんですか?」

軽音部プレイヤー中では群を抜くスキルを持つ澪さんのベース。まぁ、それを言ったら過去にピアノコンクールで賞を貰ったこともあるムギちゃんも侮れない筈なのだが、入ったばかりのあずにゃんがそんなことを知ろう筈も無い。


澪さんが「外バンも面白そう」という発言をした矢先、突如隣に現れる律ちゃん。ついさっきまでそこでフリスビーで遊んでいた筈なのだが、一体この会話の内容をどこで察知したのか、また、この会話における抑止力となるアイテムをいつの間に取り出したのかは謎。


律ちゃんが取り出した「抑止力」は、部分的に見えた映像から、おそらく昨年度の学園祭ライブのステージ写真。何があったかは第六話参照だが、最後のハプニングは確かに抑止力として充分とも言える…というか、律ちゃん、その写真を入れている封筒に何を書いているんだw

梓「よ…弱み握られてるのかな…」

この洞察は事実ではあるが、真実ではない。
難しい日本語の使い方をして恐縮だが、そもそもの問いである「ベースの上手い澪さんが、なぜこのやる気の無さそうな軽音部にいて、外部でのバンド活動をしないのか」というあずにゃんの疑問に対する回答としては真実たりえない。そして、この「真実」の部分こそが、この第九話における重要な主題であるとも言える。


…しかし、結局この日は皆であずにゃんを弄って終わってしまう。



夕方になり帰り支度をする六名(部員五名+顧問)。
各自楽しんだようなことを言っているが、本日主賓であるはずのあずにゃんはすっかり置いてけぼりというか、付いていけていない。正直、楽しんだのは君らだけだw


そんなことも考えず遊んだ余韻に浸る4名に、澪さんが一喝する。

澪「みんな聞いて!」
一同「ん?」
澪「うちは軽音部だから!
  明日からは、絶対練習するからな!
  絶対の絶対の絶対!」

あずにゃんの心情を、それぞれがどの程度把握しているのかについては、作中ではこの澪さんを除いて描かれていない。ただ、実際に「配慮している」ことを態度に出しているのは、この時点では澪さんだけだ。律/唯/紬の三名に関しては、新たに加わったメンバーに対し「仲良くやりたい」という思惑はありこそすれ、その新規参入者が「何を求めて」入ってきたのか、という点については思慮が及んでいない様子。

心機一転…なのか?

律「みんな! 忘れてるかもしれないが、うちは軽音部だから!」
澪「いや…忘れてないから…」
律「今日は練習するぞ!」
一同「おー!」「お〜?」

律ちゃんの号令に、あるものは意欲的に、また別のものは消極的に応える。
…というか、律ちゃんの言葉はまさに「お前が言うな」に近いものがあるがw


ともあれ、第九話始まって以来ようやくまともな練習風景。


この作品は毎話展開が忙しいので、話数のわりに話が長いように感じてしまうところがあり、軽音部の練習風景というのはあまり印象に残らないのだが、過去放映八話中、練習風景が出なかったのは、

  • 唯さんが入るまでの話である一話
  • ギターを買うまでの話である二話
  • クリスマスパーティの話である七話


の三回ぐらい。それ以外の五話分においては何らかの形で練習風景が一回はちゃんと入っている。で、上記三回のなかでも一話と二話は「練習」ではないが本来の活動が主題になっているわけで、本当に部活動としての活動を全くやっていないのは七話だけ。不真面目さだけが印象に残る感があるかもしれないが、実はちゃんと練習してるんですよ、彼女ら。


この九話の肝は、あずにゃんが軽音部に「ロクに練習しない部活」という印象を抱く、という点が出発点であるわけだから、観る者があずにゃんの抱いた印象に共感するため、ことさらこのシーンまで練習していない印象を与え続ける作りになっている。


さて、ようやく練習に入った軽音部だが、バンドの構成に重要な変化があることが、律ちゃんの台詞として提示されるわけだ。

律「よし!唯と梓…ギターが二人になったから、演奏の幅が広がるな!
  ん〜…どっちがリードギターやる?」

そう。これまで軽音部のギタリストは唯さんだけだったが、あずにゃんの参加によって二人になった。第六話の「感想」でも書いたが、以前の4人編成だと唯さんはリズムギターを優先せざるを得ず、他のリズムギターによるバッキングでリードギターをやる、なんてことは無理だったわけだ。第四話の合宿における練習で、類まれなるリードギターの才能を見せ付けておきながら実に惜しかったのだが、その問題が解決されることになる。


…で、律ちゃんの質問に対し、謙虚に先輩である唯さんを立てようと推挙するあずにゃんだが、割り込むように自己主張する唯さん。そこで黙ってれば先輩の貫禄があったんだがw ここでもこだわりの台詞「ふんす!」が登場。

律「一応、二人の演奏を聴いてみてから決めたほうが…」

神妙な表情であずにゃんに向き直る唯さん。まぁ、ギター歴1年の唯さんと、計算上約6年のあずにゃん。根本的な練習量がそもそも違うわけだが…

梓「そ、それじゃあ私から…」

個人的に大ピンチに陥っている唯さんを気づかってか先発を買って出るあずにゃんパワーコード主体のリフを弾いてみせるが、その時、軽音部員たちはあずにゃんのギターにカート・コバーンの姿を見た!

参考:カート・コバーン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%8A_(%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89)
カート・コバーンは梓と同じく Fender Mustang を使っていたことで知られる。
イメージ映像をフレーズだけでなく使用している楽器にも合わせていることがよくわかる。

…Aパートでのジミー・ペイジ同様、このカート・コバーンにもツインテールが生えているんだがw


次は唯さんの番だが、また唯さん「ぎっくり腰」を言い訳に逃げようとする。呆れる律ちゃん。次の瞬間──

唯「あずにゃん! ギター教えてください!」
律「変わり身はえーな!」

いきなり無駄なプライドをかなぐり捨て、あずにゃんに泣きつく唯さん。

あずにゃんのレクチャー

梓「あ…そこはミュートしたほうが…
  あと、さっきのフレーズはビブラート効かせるといいかも」
唯「ミュート? ビブラート? 何それ?」
梓「はぇ!?」
澪「こんなんでも一年間やってきたんだ…」

あずにゃんが唯さんにレクチャーを始めたようだが、あずにゃんの使う用語がわからない唯さん。ちなみにここで弾いているのは低音弦によるパワーコードなので、ビブラートをかけたほうがいいフレーズというのはまた別途やっていたと思われる。


基礎的な奏法についての用語も知らずに一年間どうやってきたのか不思議に思うあずにゃんだが、再び弾き始めた唯さんのパワーコードは先ほどと音が変わっている。サスティンが消えた乾いた音で刻まれるリズムギター

梓「あれ? ちゃんとミュートできてる…?」
唯「あぁ、さっきのが『ミュート』って言うんだ〜」

ここで「さわちゃんメモ」として解説が入る。

さわ子「『ミュート』とは、弦に軽く触れて、音が伸びないようにする技術よ!」

厳密には、『ミュート』は消音を行う操作の総称であり、さわちゃんによる解説はミュートを使用した奏法の一つについて述べたものに過ぎない。


ここであずにゃんが唯さんにレクチャーしていたのは「ブリッジミュート」といい、ピッキングを行う右手の手刀部分をブリッジサドル付近で弦にあてた上でピッキングし、さわちゃんが説明したように「音が伸びないように」弾く操作。弦は一瞬鳴ってすぐ振動を止めてしまうため、リズミカルに乾いた音を刻むときに使う。


この「ブリッジミュート」は音階を持った音を出すことができるが、押弦している左手を少し浮かせ、指を触れた状態で弦をフレットから離すというミュートのやり方もある。こちらのミュートは、その状態で撥弦しても明確な音階を持った音にはならない。


そんな感じで一口に「ミュート」と言っても、使う手や指の部位、ミュートする弦の本数、ミュート後に行う操作など様々な応用があり、それぞれ使用目的や音の出方/消え方が異なる。ギタリストはそうした操作を使い分け、あの6本しかない弦を使って多彩なニュアンスを持つ音を演出するのだ。鍵盤楽器と異なり、コンピュータミュージックでギターの音を表現するのが困難である理由はそうした「音のニュアンスの多彩さ」にある。

澪「唯はゲーム買っても説明書読まないタイプなんだよ」
梓「…あぁ、納得です」

つまり、「どうすればどんな音が出る」ということについては体感的に知ってはいるが、その操作を表す用語を知らない、ということだな。そんなことでは「へべれけ」はプレイできんぞ。詳しくは取説をよむにょー。


そんなこんなで、今日は真面目に練習している軽音部。ホワイトボードの傍ら、椅子に座って見ているさわちゃんは退屈そうだ。

さわ子「じゃあ、そろそろロイヤルミルクティー淹れてくれる?」
紬「え…? あの、今日は練習しますから!」

普段は温和な笑顔を浮かべているムギちゃんの表情も、今日はいつになく真剣だ。
そんなムギちゃんに泣いてすがりつくさわちゃん。「顧問」ってなんだっけ?

律「…ちょっとだけ、休憩するか」

律ちゃんにまで呆れられるさわちゃん。顧問としての威厳が微塵もないw

休憩の堕落

唯/律/紬「ほげ〜」
澪「練習は!?」
律「あ〜明日からがんばろう!」

休憩に入ったとたん、だらしなくリラックスする三人。
なんですか律ちゃん、その「明日から本気出す」みたいな台詞はw


まじめに練習を続ける構えのあずにゃんの口に唯さんがケーキを放りこみ、ムギちゃんが専用カップまで用意して紅茶を出し、仲間に引きずり込もうとするw このカップは実在せんのかな? ねこのしっぽが取っ手になった、ピンク色のカップとソーサーのセット。

梓「ハッ…!?
  (ダメになる…このままじゃダメになる…)」

唯の差し出したケーキを口にしたときは幸せそうな表情だったが、この堕落し緩みきった軽音部に身を置き続けることに、あずにゃんは真剣に危機感を抱いた。


居場所は何処に

夜の街、梓はある店の前に立っていた。
電飾看板の煌めく路地にあるその店の、赤い看板には「LIVE HOUSE KOTO」と書かれている。

梓「(…軽音部じゃなくて、他所のバンドに参加しよう!
   他にもきっと、素敵なバンドが…)」

活動らしい活動をしない軽音部に失望した梓は、もっと自分が真剣に音楽に打ち込めるバンドを探し始めた。照明を浴びるステージを見つめる梓。

梓「(どうしてだろう──)」

梓の見上げた視線の先に、彼女の心を揺さぶる者は現れてくれない。

梓「(どのバンドも、うちの軽音部より上手いのに──)」

──思い出すのは、暗く照明の落とされた学校の講堂。
明るく照らされたステージの上、楽器を手にして輝いていた、
梓より一つだけ年上の、四人の先輩たち。

梓「(どうして──)」

「音」を「楽しむ」こと、それが「音楽」。

いつもの音楽準備室、いつもの四人。
しかし今日手にしているものはティーカップやフォークではなく、それぞれの楽器。

唯「最近あずにゃん来ないね…」
澪「もう…来ないかもな…」

澪の声も暗い。
この中ではおそらく彼女が一番、梓が軽音部に来なくなった理由を理解しているからだろう。しかし、その時。


準備室の扉を開け、久しぶりに軽音部に顔を出した梓。

律「あっ 梓! なんで最近来なかったんだよー
  ここんとこ、毎日練習してたんだぞ!?」
唯「あ〜ん、待ってたよぅ〜」(泣いて梓に抱きつく)

…律ちゃんもおそらく、澪さんと同じように梓が来なくなった理由には感づいていたんだろうな。だから、いつ戻ってきてもいいように練習を続けていた。理由を理解できていなければ、梓がうるさくないのを良いことに、以前のようにお茶会三昧の毎日だっただろうから。
この律ちゃんの台詞には、部長としての立場と、梓を心配していたという事実と、自分達のこれまでのあり方に対する反省と、日頃の行いを棚に上げる傍若無人さが同居している。


対する唯さんの台詞とアクションは、唯さんらしく実に感情に対してストレートだ。新しく加わったはずの仲間が来なくなって、戻ってくるのをずっと待ちわびていた自分の心情に全く嘘をつかないところは唯さんらしい。


しかし、梓はうつむいたまま口を開かない。

澪「…どうした?」
律「まさか、辞めるって言いにきたのか!?」
唯「それだけは勘弁してくだせぇ!」

…なぜ唯さんが百姓口調なのかはわからないが、梓の様子に只ならぬものを感じ取った三人。しかし、梓の言葉は違った。

梓「…わからなくなって──」
一同「え?」
梓「どうして軽音部に入ろうと思ったのか…
  どうして新歓ライブの演奏に…あんなに感動したのか…
  しばらく一緒にいてみれば、きっとわかると思ってやってきたけど…
  けどやっぱりわからなくて!!」
唯「あずにゃん…」

嗚咽しながら、軽音部に入った理由と、自分の迷いを吐露する梓。


当初自分のやりたい音楽(曰く「本物のジャズ」)があった梓。しかし、程なくして彼女の心をとらえた音楽は、憂に連れられて見た新歓ライブのステージにいた四人によるものだった。しかしその四人すなわち軽音部の実態は、とても真面目に音楽をやる雰囲気ではなく──失望を抱き、外にその活動場所を求めることさえした梓。


しかし、この四人ほど彼女の心を動かしたバンドは、ついに現れなかった。たとえどれほど難度の高いテクニックを駆使するハイレベルなプレイヤーたちであっても、梓にとって桜高軽音部ほど輝いているようには見えなかったのだ。

律「よし! じゃあ梓のために演奏するか!
 その時の気持ちを、思い出せるようにさ!」

…この台詞の律ちゃん、無茶苦茶かっこいいぞ!
今この時、自分達にできる最良にして最高の選択を提案する姿、最高だ!


唯さんが背中にまわしていたレスポールを構えなおし、澪さんとともに頷く。
律ちゃんのカウントとともに始まった曲は、梓が新歓ライブで初めて聴いたのと同じ「私の恋はホッチキス」。自分達の演奏で心を動かされた者が確かに一人そこにいることを、彼女達は自分に誇っていいと思う。

唯先輩はまるで音楽用語知らないし
律先輩のドラムも走り気味なのに
四人そろって演奏すると
どうしてこんなにいい曲になるんだろう
どうして──

そんな梓の疑問に対する答えは、黒髪のベーシストによってもたらされる。

澪「梓──この前、なんで私が外バン組まないか訊いたよね?」
梓「あ…はい」
澪「やっぱり、私はこのメンバーとバンドをするのが楽しいんだと思う。
  きっと、みんなもそうで…だからいい演奏になるんだと思う!」

はっと気づかされる梓。
それが、梓の求めた問いの答え。


「音」を「楽しむ」と書いて音楽。
澪さんの言葉どおり、それぞれが仲間と演奏することを楽しむ。
多分それが、一番大事なこと。楽しくなければ音楽じゃない。


澪さんが、梓を導くように呼ぶ。

澪「さあ! 一緒にやろう、梓!」

声をかけた澪さんを中心として、梓に向けられる八つの瞳の温かな眼差し。
悩み、涙に濡れていた梓の顔が、笑顔に輝く。

梓「はい! 私、やっぱり先輩方と演奏したいです!」

唯さんが梓に抱きつき、全身で気持ちを表現する。戻ってきたこと、そして自分達の仲間に加わりたいと言ってくれたことが嬉しいと。

澪さんが言う。これからも今までのようにお茶とケーキの毎日だろうけど、それもやはり必要な時間なのだ、と。


なんか今回のクライマックスは、リズム隊コンビ(律/澪)がかっこよすぎるぞ!
こういうシーンは律/澪コンビの独壇場だろうな。二人は梓の問いに答えを与え導く役目、唯さんは四人の心を代表して表現するのが役目。


…とか思ってたら、

唯「燃え尽きた…」
律「向こう一週間は演奏したくね〜」
梓「…本当に?」
澪「たぶん…」

あずにゃんが戻ってきて、気が抜けたのか途端にだらける律/唯コンビ。
さすがに最後までシリアスでは終われないのはこの四人、いや、今後はこの五人の宿命なのかw



なお、本章の本文中では、「梓」という表記と「あずにゃん」の表記が混在しているが、これは作中進行の雰囲気を壊さないように、あえて統一せず意図的に表記を選択した結果だったりする。梓が真剣に自らの葛藤を吐露しているところで「あずにゃん」などと書いてしまうと、それが本人にとってどれほど深刻な葛藤なのか、というところがぼやけてしまうので。


次回予告

作中の時間は一気に飛んで、再び夏休みがやってくる。
軽音部の夏休みといえば合宿。去年は四人、今年は五人。
あずにゃんの加わった軽音部二回目の合宿は如何に…?


感想

今回の話は、梓の「入部」から「仲間になる」までを描いた話。つまり、「入部」しただけでは「仲間になった」わけじゃない。


二年生たち四人は梓の入部を歓迎し、うち三人は溶け込んでもらおうとしてか、フレンドリーな雰囲気をつくるわけだが、そうした軽音部のあり方が徹底して梓の想いとすれ違い続ける前半。四人の中で最も梓と似たメンタリティを持つ澪だけが、その心境を正確に把握している。


後半、軽音部の外に活動の場を求める梓の姿は、自己の価値観からの逃避ととらえることもできる。軽音部に対して確かに抱いた感動を、その後目の当たりにした現実を根拠として否定しようとする姿だが、結果として自分の感動を嘘にしてしまうことが出来ず戻ってくる。


クライマックスでは、それまで映像による演出で描写されていた梓の入部の動機が、明確な言葉として本人の口から語られる。「憧れ」を踏み越え飛び込んだ中で見た「現実」、しかしその現実と当初抱いた憧れは同根、すなわち同じものが生み出していることを知り、受け入れる。こうした梓の「心の冒険」こそがこの第九話だと解釈した。今回の主役は梓であり、先輩四人は今回は脇役。澪は梓のメンター(導き手)としての役割。


梓が新歓ライブで抱いた感動について。
こうした感動を抱くことは、音楽に限らず俺もよくある。しきりにプロモーションされ「名作」「名曲」「感動の大作」などと喧伝されるものを見ても大して動かない心が、高度なテクニックを誇るわけでもなく、派手さもなく、素朴で小さなアマチュアの作品によって、その中枢を直撃されるような衝撃を覚えることが確かにある。
こうした感動は主観であるから他者への共感は求めようがないし、逆に他者からの否定も無意味だ。いかなる評価が外部からもたらされようと、感動を抱いたという事実は厳然として自己の中に存在し続け、その事実からは永遠に逃れることはできない。


テクニックや派手さは言葉で説明できるが、心への直撃は説明できない。それは原則として自分だけの、孤独にして至高の感動だからだ。そして、だからこそそれを共有できた時の喜びは大きいのだとも思う。誰かと何かを共に生み出すことは、感動を共有することでもある。


梓はそのために、ステージの上にいた四人に自ら近づき、失望までして感動の共有を求めたのだろう、と。梓が本当にやりたかったのは、そういう「感動の共有」を伴うものだったんじゃないか、と思えてならない。



で、次回は新学期が始まったと思ったらもう夏休み。今年は試験も追試も無いらしい。昨年は大変だったからなw また例のごとく、琴吹家の力を見せ付けられるのが楽しみだ。

*1:6弦側ボディサイドからエンドにかけて袈裟懸けに描かれた3本のライン。MG73などに見られる。

*2:本体色にあわせた塗装を施したヘッド。