夏の終りの卒業式 (アレONLINE)


始まったものには終りがある。
祭囃子もいつかは絶えて、夜の静寂が訪れる。


今月初頭から始まったアレONLINEの社内βテストも今日が最終日。今日の2230をもってテスト用サーバは停止し、期間中みんなの分身としてがんばってくれたキャラクターたちが再び出会うことはもはや二度とない。


定時が過ぎてもまだたくさん残っていた生徒達。だが、サーバ停止時刻が近付くにつれて、この一ヵ月の間同じ学校で過ごした友達が一人、また一人と下校(ログアウト)してゆく。

今下校したら、もう会えないんだね。

そんなことを思ってしまった。


もちろん社内βテストだから、それぞれのキャラクターを操っていたのは同じ会社の社員達だし、彼らとは今後とも会う機会はいくらでもある。でも、「ゲームの中の、この学校の生徒」として会うことは、もう決してない。


皆が最後の下校をしてしまった中、しがみつくように学校に残った生徒が四人。うち一人はリアルの仕事に忙殺されてキャラを動かすこともままならず、会話していたのは三人。その中の一人が私のキャラだった。

サーバ停止時刻30分前になって、その中の一人が学校めぐりをしようと言い出した。たった一ヵ月足らずしか過ごしていないゲームの中の学校だけど、なぜか自分もそうしたかったから、一緒に学校を巡った。敷地内の片隅にあるきれいな泉のほとりの教会、人目につかずに学校外に出られそうな裏手門、シリーズ初作を彷彿とさせる大樹とまぁ、名所にはことかかない学校だ。一緒に巡った三人のうち一人は開発チーム員で、自分達が作ったプログラムとデータなのに、この一ヵ月過ごした「学校」がとてもいとおしそうだった。


繋いで来た絆が、何かの節目で形を変えることを余儀なくされる痛み──あぁ、そうだ。学校を卒業するとき、確かにこんな感じだった。

「卒業式」があるわけじゃない。だけど、この「学校」から皆去らねばならない。だから、これはこの学校の「卒業」なんだ、きっと。

昔からひねくれた子供だった私は、中学でも高校でもプライドが邪魔して卒業式に泣けなかったクチの人間だ。だから、ゲームの中では自分のキャラクターに代わりに泣いてもらうことにした。まぁ、このゲームの宿命(いや、傾向か)としてキャラクターは女の子なので(笑)そういうのもありだろう。

最後は自分達の教室で、ようやく動けるようになった四人目を交えて最後の瞬間を待つことに。最後まで一緒に過ごしてくれたゲームの中の友達に「色々ありがとうね」というセリフが自然に出て来る。


そして22:30、「サーバとの接続が切断されました」のメッセージとともに、一ヵ月足らずの学校生活は終りを告げた──



…なんというか最終日の今日、そんなこんなでこのプロジェクトの大成功を確信してしまった。

他部署も含めた社員のみんながこのタイトルに触れたことで、うちの会社が今まで触れて来なかった種類のゲームの可能性に、それぞれの立場で気づいてくれたんじゃないかとも思う。会社的にもいい刺激になったんじゃなかろうか。


発売元の開発部署にいる人間(チームは違うけど)が言うのもなんだが、このタイトルは間違いなく「買い」だと思った。太鼓判。


…回線とビデオカード増強しなきゃなぁ(ぼそっ