「けいおん!」第五話(含ネタバレ)
延々と部屋の掃除をしたりさぼったりしていたら、第六話の放映日になってしまったので、せめて放映前にレビューを出さねばと思い書いてみる。
なお、過去の放映回についてのレビューはこちら。
1〜2話については、漠然とした感想の体をとっています。
アバンタイトル
暑そうな夏の日のひとコマ。
蝉の声が響く部室で、律ちゃんが何かを見ている。。
そんな中、暑さにうだりながら部室に入ってくる唯。
律ちゃんは見ていたものを唯にも見せる。
それは昔の軽音部を写した写真を集めたアルバムだった。
律「いつの時代のバンドだよって感じだよな」
…あー、うん。
80年代とかよくこういう人たちいたね。
今だって冷静に考えれば似たようなもんだがw
唯(こういうイメージしか無かった私って…)
クローズアップされる一枚の写真。
かつての軽音部員と思われる女性をバストアップで写したものだが、
そこに写る派手な装いの女性の正体とは…
…ってこれ、在学中だから高校生当時なんだよなw
練習風景
…なんか、珍しく練習していますよ。
この作品の軽音部は、原作だとお茶とお菓子ばっかりで真面目に練習しないイメージがあるわけだが、アニメではそうでもないのか? そういった「部活本来の活動をあまり真面目にやってない部活動の日常漫画」というのは、古くは「究極超人あ〜る」あたりからあったりするわけだが、このアニメでは一応それなりにちゃんと活動してはいるらしい。
律と澪の会話から、なにやらオリジナル曲を弄っている模様。後ろでは唯が C のコードをストロークで鳴らしてます。チューニングの確認でもやってるんだろうか?
その時突然──
唯「あいてっ」
澪/律「ん?」
律「どした?」
唯「指の皮むけちった」
律「うわ、痛々しい…」
唯「ほらー澪ちゃんも見て〜」
…しかし痛いのと怖いのが嫌いな澪さん、耳をふさぎうずくまり怯えていますw
その澪さんの様子を見て、わざとらしく大声で「手のマメがつぶれた」などと言って追い討ちをかける律ちゃん。まぁ、付き合いの長いこの二人にとっては、日常のレクリエーションというやつですな。
で、唯さんはそれをぼーっと見ているわけで。
唯「…律ちゃん、絆創膏とか持ってない?」
しかし律ちゃん聞いちゃいねぇw と、そこに…
さわ子「ごめんね。ちょっと譜面台を…あら?」
現われたメガネの音楽教師・山中さわ子先生。
(主に律ちゃんによって)騒々しい音楽室の中でも唯さんの指に気付いた模様。
ここでサブタイトルコール。
場面変わって、なにやら用事を済ませた後らしいムギちゃん。
職員室前を通りがかった際に、さわ子先生による治療を受ける唯さんを見つけた様子。
唯さんは、綺麗に整頓された先生の机に感心している模様。ここら辺は、さわ子先生が普段周囲に与えている印象を強調するための演出だろうな。
指の処置が終わり、さわ子先生は唯さんの指の様子を調べにかかります。
さわ子「どれどれ…」
唯「あの…」
さわ子「(唯の指先を確認しながら)ん〜…まだまだね。
この分じゃまたすぐ皮剥けるわよ」
唯「えぇ〜」
さわ子「そうやって何度もやってるうちに
皮が硬くなって弾けるようになるの。誰もが通る道よ」
唯「ほぁ〜そうなのか…ってあれ? 先生、ギターやってたんですか?」
さわ子「ううん。昔、友達がね」
そんな二人のやりとりを戸口で聞いているムギちゃん。
その後もさわ子先生は職員室に帰ってきたほかの先生のためにお茶を淹れるなど、「よく気がつく清楚で真面目で優しい先生」という印象…なのだが…。
お茶を淹れるために先生が去った直後、職員室の戸口で待っているムギちゃんに気付く唯さん。声をかけられたムギちゃんは大層驚いている様子…?
ところで、このあたりについて原作では、それとなく本作では珍しい下ネタが組み込まれていたりしたのだが、アニメではそのあたりはスルーしている模様。
非公認部活動
唯「ムギちゃん、どうかしたの?」
紬「え…っ いや…綺麗だったなって思って」
唯「あぁ、さわ子先生ね。それより、どこ行ってたの?」
紬「あ…うん。澪ちゃんに言われて、
学園祭のステージを借りるための申請に行ってたんだけど…
軽音部はまだちゃんとしたクラブとして認められてないって断られちゃった」
唯「あぁ〜そっかぁ〜」
(間)
唯「ん?…へっ!?」
職員室から戻りながら話す唯さんとムギちゃん。
重大な情報がムギちゃんから放たれるも、危うくスルーしてしまうところだった唯さん…まぁそれはムギちゃんの口調と話術によるところが大きいわけだが。
場面変わって部室(音楽室)。
律「部として認められてないだって!?」
紬「うん…そうみたい…」
唯「部員が4人集まったら大丈夫じゃなかったの?」
存続の危機を夏の最中まで引きずっていた軽音部。しかも本人たちは気付いていなかった。一体これは何があったのか!? しかしそれ以上に…
唯「…っていうか、クラブって認められてなかったのに、
音楽室、好き放題つかってよかったのかなぁ」
つまり、非公認のまま放課後の音楽室を占拠して、お茶飲んだりお菓子を食べたりしていたわけで。誰も気付かなかったのか?w
可及的速やかに事実を確認し、事態を改善せよ
そんなわけで、生徒会に事実確認に向かった軽音部の面々。
唯「たのもう!」
勢いよく生徒会室の扉を開け、殴りこむ構えの唯さんと律ちゃん。
そこにいたのは、唯の幼馴染の和さん。
唯「えー!? 和ちゃんがなんでここに?」
和「なんでって…生徒会だからだけど?」
唯「すごいね! さすが和ちゃんだよ!」
律「…お前ら、本当に幼馴染?」
原作だと、唯以外の軽音部の面子とはこれが初対面になるのだが、アニメでは第三話の追試勉強の段階で顔合わせ済み。そのあたりの変更は、ここから先の流れを違和感無く進めるためか。
唯と律の話を受け、生徒会の資料を確認する和さん。
しかし、やはり現時点で軽音部を部活動として認めた記録は無い模様。
あまりの事態に…
律「おそらくこれは…弱小部を廃部に追い込むための…生徒会の陰謀!」
自称・部長の律ちゃん、生徒会陰謀論を唱え始めますw
真に受けて取り乱し、和さんにすがる唯さん。もちろんそんな陰謀は無いわけだがw
和「…っていうか、部活申請用紙が出てないんじゃないの?」
紬「部活申請用紙…?」
律「そんな話は聞いてないぞ!」
澪「聞いてるだろ…!!」
どす黒い憤怒のオーラを身にまとい、突如生徒会室の入り口に現われる澪さん。
そして律ちゃんの自白が始まる。
律「そう…それはまだ、春のこと…」
部活申請用紙を書こうとした律ちゃんは、ムギちゃんが持ってきたお菓子のご相伴にあずかるためにその作業を中断し、以後、部活申請用紙は机の中にしまい込まれ、記入されることも提出されることもなく忘れ去られたままだった…という。
澪「やっぱりお前のせいかー!!」
律ちゃんの顔を引っ張りお仕置きする澪さん、なだめるムギちゃん。生徒会室は俄かに騒がしく。
和「なんていうか…軽音部って、唯にピッタリだと思うわ…」
唯「へ?」
呆れはしたが世話焼きの和さん、生徒会役員の権限で軽音部の公認化作業にとりかかる。
確かにこのあたりは、単に「軽音部員の唯と幼馴染」というだけでは、生徒会室で騒ぎを起こすことを容認したり、わざわざ「公務」である部活動の公認化作業まで世話を焼く理由としては薄いわな。和のキャラクターでは特に。全員との面識が既にあるという前提が第三話で出来上がっているから、ある程度納得できるわけで。
和「部員は…4人、で…顧問は?」
軽音部員一同「…顧問?」
顧問は…?
そして、軽音部の顧問とすべく白羽の矢が立てられたのが、冒頭で登場した山中さわ子先生である。この先生、第一話からちらほらと登場してきており、原作を知らずにアニメを見ている人などからは、「あのキャラクターに真田アサミは合わないのではないか」などと言われているが、今回の話は真田アサミがキャスティングされた理由がこれでもかとわかるように作られているw
山中さわ子──わが校の音楽教師である。
その綺麗な顔立ちと、やわらかな物腰で、生徒だけでなく、教師の間でも人気が高い。
さらに、楽器の腕前や歌声もすばらしく──
…ナレーション調の説明で、さわ子先生を褒めちぎる律ちゃん。
引用部には敢えて台詞の体をとらなかったw
さわ子「あの…」
律「…『ファンクラブが存在するほどの人気がある』」
さわ子「…さっきから何を言ってるの?」
至近距離から双眼鏡で先生を凝視し、気付かれてもなおナレーションを続行する律ちゃん。
どこからか生えてくる他の軽音部員三名。そして先生は顧問になって欲しいと詰め寄られる。しかし…
さわ子「ごめんなさい…なってあげたいのはやまやまだけど、
私、吹奏楽部の顧問しているから、かけもちはちょっと…」
先生の返事に落胆する四名…が、律ちゃんは気を取り直しナレーションを続行w
律「『今まで声をかけてきた男は数知れず…』」
さわ子「だ、だからおだてても無理です!」
何とかして顧問になってもらおうと詰め寄る軽音部。
律「ここに名前書いて、ハンコ押すだけ!ね、簡単でしょう?」
…お前は悪質な新聞勧誘員かw
必死の律、澪、紬の三名とは対照的に、唯だけは何かが気になるようで、さわ子先生の顔をじっと見ていたが、何かを確信したのか先生に尋ねる。
唯「…先生、ここの卒業生ですよね?」
さわ子「え、えぇ…?」
唯「さっき、昔の軽音部のアルバム見てたんですけど…」
唯の一言に顔色が変わるさわ子先生。何かまずいことでも…?
葬られかけた歴史
さて、この記事ではここまで、本文中で意図的に「さわ子先生」という表記を使ってきたわけだが、それはこの人物が対外的に演じている印象を表記するための記号として使ってきた言葉だ。ここから先、本文中におけるこの人物の人名表記は変化していく。
さわ子「あ…アルバムはどこにあるの?」
唯「へ…? 部室ですけど…」
さわ子「…そう」
唯「先生…?」
唯からアルバムの所在を聞き出した教師・山中さわ子。
ゆっくり歩いて軽音部員四名から距離を取り──
普段の振る舞いからは想像もつかない速度で駆け出した。
さわ子「(まさか、最後の一冊が学校に保管されているとは思わなかったわ…)」
大股で階段を駆け上がり──
さわ子「(あれは──決して人々に知られてはいけない血塗られた歴史──)」
輸送中の本棚を飛び越え──
さわ子「(決して目覚めさせてはいけない悪魔の仔──)」
これまた輸送中の長机の下をスライディングでクリアし──
さわ子「(見てはならない封印の書──)」
なぜこんなに横切るように運んでいる人が多いのかわからない中、これまたなぜか運ばれているフラフープの中央を流れるような動きで身体をひねり、くぐりぬけ──
さわ子「(開けてはならない禁断の扉──)」
そして目指す、音楽室。
さわ子「(あれは…あれは…!)」
音楽室の戸口、逆光に浮かぶ教師・山中さわ子のシルエット。
そして見つける緑色の表紙。彼女にとって忌まわしき記録のアルバム。
さわ子「これで…もう…」
彼女が開いたページ。それはアバンタイトルに登場した、派手な装いの女性が写った写真があったはずのページ。だが…
彼女が葬り去ろうとしたであろう写真は既に抜き取られた後だった。動揺する教師・山中さわ子。
律「…やっぱり、先生なんですね?」
軽音部員四名は音楽室まで追いつき、教師・さわ子は追い詰められた形に。律が突き出した手が持っていたものは、アルバムから消えたあの写真だった。
もはや言い逃れは出来ない。そう観念したさわ子は、滔々と自白を始める…って何のアニメだw
戦慄の過去
つまり、さわ子先生は在学中軽音部に籍をおいており、第四話の合宿で出たカセットテープに入っていたデスボイスも先生のものだったという。なお、この声は未だに澪さんのトラウマになっている模様w
テープのギタリストが、さわ子先生であったことに気付いた紬と唯。ぜひ弾いてもらおうと唯は自分のギターをさわ子先生に手渡した。その時、先生に異変が。
あぁ…このマホガニーとメイプルのレスポール独特の重さ──
(6弦開放音)
このハムバッキングピックアップの
甘く歪(ひず)んだ、倍音の多い柔らかい音──
映像などでエレキギターを遠目に見ている分には気付かない人もいるかもしれないが、エレキギターはほとんどの物が木で出来ている。まぁ唯のギターの場合は木目がはっきりしているのでわかると思うが。マホガニーとメイプルはその素材となった木の種類。ネックからボディ裏を占める大部分がマホガニー材で作られ、あの木目の浮かぶサンバーストのボディトップはハードロック・メイプル(イースタン・メイプルとも呼ばれる)で作られる。マホガニーは密度の高い木材なので、当然さわちゃんが言うように重くなる。
ちなみに世の中には木以外の素材で作られたギターもあり、特にこの作品との繋がりで言えば、人物のネーミングという点から繋がるTalbo というギターはアルミニウム鋳造で出来ていたりするわけだが。
で、これまで幾度も言及しているのでおわかりかと思うが、ここでさわちゃんが口にしている「レスポール」は唯のギターの名前。唯のものの場合、正しくは、"Gibson Les Paul Standard"。「ギターの王様」とまで言われる世界で最も有名なエレキギターであり、あまりに有名なために、廉価なコピーモデルが他の各社から発売されていて、それらは一まとめにして「レスポール・タイプ」と呼ばれていたりする。
この名前はもともと人名で、レス・ポールというギタリストのシグネチャモデルとしてギブソン社が発売したのが始まりだが、その名前の元であるレス・ポール氏、現在93歳にして、今でもニューヨークのジャズ・クラブ「イリジウム」にてレギュラー出演しているという、史上最高齢の現役ギタリストだ。しかもこの方、単なるギタリストではない。現代における音楽製作では欠かせない「多重録音」や「マルチトラックレコーディング」の概念を発明した人物でもある。我々が普段耳にする数多の現代音楽の世界は、この唯のギターにその名を与えた人物によって切り開かれたものだ。
レス・ポール氏について知りたければ、このドキュメンタリー映画がお薦め。
唯のギターを一つとってみても、深い歴史がある。
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で、ハムバッキング・ピックアップ(Hum-backing pickup)というのは、二系統のコイルを張り合わせたピックアップ。
エレキギターという楽器は永久磁石の近くで鉄弦が振動することにより生じる磁界の動きをコイルでとらえ、そのとき電磁誘導によって生じる電流を音声信号として取り出す楽器であるわけだが、「ピックアップ」というのはこのコイルと永久磁石をセットにしたパーツの名称。
ハムバッキングピックアップは、二系統のコイルを張り合わせることにより、弦振動に由来しないノイズ成分を相殺して軽減し、クリアな音を取り出す仕組みになったピックアップ。唯の持つ Les Paul Standard や、そのコピーモデルなどに搭載されているのはこのタイプ。さわちゃんが言うように「甘く歪んだ、倍音の多い柔らかい音」、つまりまろやかな印象を与える音声信号が出てくる。手持ちのギターから現物の写真を出してみる。
うーむ、埃をなんとかせねばならんなw
写真上半分は、昨日爪楊枝を使って直した Les Paul のコピーモデル(GrassRoots G-LP-50S HSB)のものなので、唯のものの外形に近いはず。ピックアップの写真を撮っている携帯と手が写りこんでいるのは気にしないようにw 写真下は GrassRoots G-FR-56G のもの。
これに対し、一系統しかコイルを持たないピックアップはシングルコイル・ピックアップと呼ばれ、Fender の Stratocaster や Telecaster をはじめ、そのコピーモデルなどに搭載されている。こちらはノイズ成分を相殺する仕組みを持たないため、金属的でざらついた、刺々しくノイジーでワイルドな音になるが、むしろそれが持ち味とも言える。俺の手持ちのギターだと最初に買った ST-180 ぐらいしかないな。
痛ギター化しているのは気にしないようにw
ハムバッキングピックアップが外来ノイズをキャンセルする仕組み「ハムキャンセル」についてより詳しく知りたいなら、こちらのサイトがお薦め。
…で、さわちゃんが6弦を鳴らしたときにピックアップに言及しているので、アンプには繋がっているらしい。直後のカットでは、くずおれるさわちゃんが抱えたレスポールから、画面左に向けてシールドが伸びているのが見える。
唯「…先生?」
さわ子「クックックッ…しゃーねぇなァ」
一同「目つき変わった!?」
これまでの柔和な眼差しから、睨みつける三白眼への豹変。教師からギタリストへ。
直後、ゲインの高いメタルサウンドで速弾きを披露。細かなエコノミーピッキングではなく右手をフルスイングするストロークで弾いているので、単音カッティングフレーズ…なのか、これ? この動きの大きさでフルピッキングで弾くのはかなり無理そうなんだが…
「タッピング…!!」とムギちゃんが驚いているこれは、右手によるピッキングを伴わず、左手の指を指板上の弦に叩きつけることで音を出す「ハンマリング・オン」と呼ばれる技法と、同様に指板上の弦に指を引っ掛け離すことによって音を出す「プリング・オフ」と呼ばれる技法を用いる「トリル奏法」に加え、さらにピッキングが不要になった右手を用いて指板上の弦をハンマリング/プリングすることでより広い音域でのトリルを可能にする奏法。
Wikipedia によると「ライトハンド奏法」というのは日本ローカルな呼び方らしい。
(→タッピング奏法 - Wikipedia)
ちなみにこれ単体でやるのはそんなに難しくないが、フレーズに組み込んだりするととたんに難しく…
「歯ギター…!!」と律ちゃんが驚いている、歯でピッキングを行うパフォーマンス。昨今では「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーさんことヨハネ・クラウザーII世の得意技として有名になった感があるが、リアルでは元祖ジミ・ヘンをはじめ昨今ではポール・ギルバートとかがやってみせてくれたりする実在のパフォーマンス。一応やってみようとしたことがあるが、顎が開かずに歯が弦に届かなかったので無理だったw
さわ子「おめーら! 音楽室好きに使いすぎなんだよ!!」
一同「ご、ごめんなさい!」(土下座)
さわ子「だいたいなァ!! …はっ!?」
そして我にかえるさわ子先生。
さわ子「…今の見た?」
一同「はい…」
(さわ子、がっくりと崩れ落ちる)
さわ子「先生のときはおしとやかキャラで通すって決めてたのに…!」
どうやらさわ子先生はこれまでずっと猫をかぶってきたようだが、こうなってはもはや、この四名の前では、これまで築き上げてきたイメージなど無力。そして先生が(勝手に)語り始めた過去とは…
…と、ここでCMをはさんでBパートへ。
山中さわ子の受難
Bパート突入。
さわちゃんは、高校時代に好きになった男に、「ワイルドな娘が好き」と言われ、それを突き詰めた挙句行き過ぎた模様w
そして教師になり、在校当時の印象を払拭して「おしとやかキャラ」で通していたところ、新生軽音部によって過去を暴かれる(というよりバラす)羽目に。もはや絶望しかみえない彼女の肩に、律ちゃんが手を置き…
律「先生、顔を上げて」
さわ子「律ちゃん…」
律「バラされたくなかったら顧問やってください」
恫喝にかかるのだったw
そんな律ちゃんとさわちゃんの様子を食い入るように見ているムギちゃん。こちらも今回の話から、その妄想癖が徐々に表に出てくる模様w
忘れていたパート
学園祭のライブで披露する予定の曲を、新たに迎えた顧問・さわちゃんの前で演奏する四人。
澪「…って感じのオリジナルなんですけど」
さわ子「うーん…」
律「どうですか、顧問として!?」
普段ダラダラしていても、そこはやっぱり音楽好きの軽音部。自分たちの曲の出来映えはもちろん気になるようで、律ちゃんなどは身を乗り出して訊いている。
さわ子「そうねぇ…
前ノリ、後ノリとか、リズムセクションがバラバラとか、
色々気になることはあるけど…まず、ボーカルはいないの?」
澪「…あっ!!」
そういやそうだ。
この軽音部、編成がギター、ベース、キーボード、ドラムで四名。専任のボーカルはいない。なんで今まで気づかなかったんだという気がせんでもないが、最初から気づいてたら、唯とかはギター始めずにボーカルやってたかもしれんね。
ボーカルというのは楽器が出来なくても、声が出せて歌うことができればまぁ何とかなるパートで、アマチュアバンドなら「カラオケが上手い人」で充分つとまったりするから、入部当初何も楽器経験が無かった唯はそっちに流れていたかもしれない。
ボーカルがいないことにも気づかず、勿論歌詞もまだ無く、部活動としてもながらく非公認のまま音楽室を占拠していた軽音部に対し、さわちゃんの怒りが爆発。そこをムギがなだめにかかる。
さわ子「だいたいねぇ!」
紬「先生っ!」
さわ子「ぁん?」(メタリストの形相で)
紬「ケ…ケーキ、いかがですか?」
さわ子「(振り向きながら)…いただきます!」
一同「いただくんかい!」
…さわちゃん、どこを向いてるんですか?
実録:「ふわふわ時間(タイム)」ができるまで…?
夜中、自宅でヘッドホンをかけ、紙に向かいペンを持つ澪さん。歌詞を考えている様子。
たぶんヘッドホンからは、自分たちの曲が流れているのだろう。
澪「はぁ…詞先にすればよかった…」
「詞先」は、先に詞があり、後から曲をつける作り方。曲が先にあり、後から詞をつける、今澪さんがやっているようなやり方は「曲先」。商業音楽では曲先のほうが多いという話を聞いたことが。
まったくの余談だが、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」では、発掘された曲に対し作詞家が詞を考えているシーンがあった。あれも曲先の作り方だな。結果的には別途発見された詞が割り当てられたが、作中設定で50万年前に曲と詞のどっちが先に作られたかはわからない。余談終わり。
歌詞づくりに悩む澪さんの携帯に、一通のメールが届く。発信者はムギちゃん。
メールの中に使われていた語句がなにやら引っかかるらしく、思い当たる節を回想してみたりしている。
そしてどうやら、歌詞は出来たらしい。我先にと見たがる他の三人に対し、繊細な澪さんは見せるのをためらう。なんだかんだと押し問答の末、業を煮やしたさわちゃんが歌詞を書いた紙を取り上げ発表する。実はさわちゃん、気が短いw
そしてそこに書かれていた歌詞は…
君を見てると いつも
ハートDOKI☆DOKI
揺れる思いはマシュマロみたい
ふわ ふわ(ハートマーク)
(以上画面書き文字)
…この歌詞に、悶絶する律ちゃんとさわちゃん。
当の澪さんにとっては結構な自信作である模様で、二人の反応に落胆しかかったところを、悶絶した二人は必死でフォローする。律ちゃんは唯さんにもフォローを求めるが…
唯「すごく…イイ…」
(唯、澪の手をとり)
唯「私はすごく好きだよ? この歌詞!」
澪「ほ、本当!?」
…なんかうっとりした表情してますよ唯さん。フォローどころか全力支援してますよw
思惑がはずれた律ちゃん。こんどはムギちゃんの反応を見るが…
律「超ウットリしてるーっ!」
ムギちゃんもまたうっとりしてますよ。ただ、なんか唯さんとはニュアンスが異なる模様。
色々問いかける律ちゃんの台詞との会話が微妙に噛み合ってないw
そしてすがるように、律ちゃんはさわちゃんに同意を求めるが…
律「さわちゃんは、この歌詞ないと思うよね!?」
さわ子「え!? えぇ、そうねぇ…」
律「だよねー! 三人とももう少し考え直そうよ。みんな落ち着いて…」さわ子「(待てよ…? こういうキャピキャピした曲好きって言ったほうが、
私のイメージ上がるかも…)」
何やら打算と妄想を巡らせ始めたさわちゃん。そして…
さわ子「わ、わたしも〜、この曲好きかも〜」
律「あれー!?」
あっけなく裏切るw
結局賛成多数にて澪さんの歌詞は採用決定。涙目で不本意ながら採用を認める軽音部部長の律ちゃん。歌詞を作成した澪さんをボーカルに任命しようとするが…
澪「だ、だって…だって!
こんな恥ずかしい歌詞なんか歌えないよぉ!」
律「おい!作者!」
自分で書いた発表前提の歌詞を「恥ずかしい歌詞」とか言うなw
結局澪さんをボーカルにするのは断念。他にボーカルが出来そうな人は…って、唯さんがすごくやりたそうな顔をしてるんですが、あえてスルーしてムギちゃんに確認する律ちゃん。
律「ムギ、やってみる?」
紬「えっ? 私は…キーボードで精一杯だし…」
律「そっかぁ…じゃあ…」
再び唯さんをみると、やはりやりたそうな顔をしている。さりげなく、わざとらしいアピールまで始める始末。半ば折れる形で…
律「…唯、やってみるか…?」
唯「えぇっ! 私ぃ? でもぉ 歌そんなにうまくないしぃ
私でつとまるかどうかわかんないっていうかぁ」
律「じゃあいいや」
唯「ごめん!嘘!歌う!歌いたいです!」
わざとらしく謙遜する唯さんをあっさりスルーしようとしたところに泣き付かれ、結局唯さんをボーカルとして据えることに。
…前回第四話のレビューで
…ところで、「ふわふわ時間(タイム)」とか本当にやるんか?w
とか書いたが、本当にやるらしいw
特訓
そして実際に、唯さんに歌ってみてもらうことに。
もちろん唯さん、ギターパートと兼任なので、両方同時にできなければならないわけだが…
歌を歌えばギターがおろそかになり、ギターを弾けば歌を忘れる。弾きながら歌うというのは、ある程度慣れないうちは確かに難しい。
唯「うっうっ…ギターを弾きながら歌が歌えない…」
涙に暮れる唯さん。そんな唯さんを見かねたさわちゃん。
さわ子「仕方ないわねぇ…先生が特訓してあげる」
唯「先生…!」
(さわちゃん、唯の両肩をガシッと掴み)
さわ子「それじゃあまず歯ギターのやり方は…」
唯「それはいいです」
原作どおり。歯ギターそんなに好きかw
そんな二人に、再び惚けた眼差しを向けるムギちゃん。今回はとりわけ妄想癖が強調されている模様…まぁ、アニメでは今まであんまり出てきてないからなw
さわ子「じゃあ、振り落とされないようについてきなさいよ!」
唯「らじゃー!」
特訓のために駆け出すさわちゃんと唯さん。
音楽室に残された三人のうち、ムギちゃんは固まったまま。それに気づいた澪さん、作詞活動中に送られてきたメール以来、澪さんの中には「ムギ百合疑惑」がある模様。もう一人残されている律ちゃんに意見を求める。
澪「律…」
律「なに?」
澪「ムギってさ、もしかしてさわ子先生のこと…」
律「なに?」
澪「いや、だから…さわ子先生をさぁ…」
律「え!?マジで!? ムギー! さわ子先生のこと好きなのかー?」
澪「ば、バカ!」
…直球かよw
まぁこれは澪さんが意見を求める人選を誤ったのではない。他に人がいなかっただけだw
で、当のムギちゃんは…
紬「あ、いえ…ただ、女の子同士っていいなぁって」
律「へ!? まさか…」
澪「なぁんだ、良かった…」
律「え? いいのかよ!?」
紬「本人たちがよければ、いいんじゃないでしょうか…」
澪「えっと…あー…ん?」
律「な…何を言ってるんだ…?」
おそらく律ちゃんの脳裏に、ミルコ・クロコップの映像が字幕付きでよぎったに違いない。
学園祭、出演決定…?
和「えーっと、ボーカルが唯で、曲目が『ふわふわ時間(タイム)』…と。
OK。じゃあ出演時間決まったら、また連絡するね」
紬「よかった。わざわざ来てもらってありがとう」
和「これも生徒会の仕事だから」
顧問も決まり、部活道としての正式な登録も完了したようで、ステージにおける演目も決まった。生徒会役員の和さんによる協力のもと、無事学園祭でのライブが実現する運びとなった模様。
ただ、昔からの唯を知っている和さんは、バンドの顔となるボーカルが唯であることに一抹の不安を抱かずにはいられない様子。そんな和さんに律ちゃんと澪さんは「先生のもとで特訓中」と太鼓判を押したその時…
まばゆい逆光とともに開け放たれる扉。そこに立つ二つの人影は、今まさに特訓を終えた唯さんとさわちゃんだった。
さわ子「…待たせたわね…完璧よ!」
不動不敵に佇む唯さん。
さわ子「さぁ唯ちゃん…見せてあげなさい!」
突如顔を上げ、ギターリフを奏で始める唯さん。ちなみにリフは
|E5|A5 B5|
のリピート。パワーコードなので初心者でも簡単。ギター始めた人はぜひやってみて欲しい。タイミングよく左手の押さえる指を緩めてミュートするカッティングを忘れなければ、唯に負けないように弾けるはず。
一同「おぉ…!」
律「すげぇ…!」
澪「上達している…!」
紬「自信に満ち溢れた表情…!」
明らかに上達したギターリフに、一気に高まる期待。そして唯さんの口から歌声が…?
唯「ぎみをみでるど いづもはーとどきどき…」(しわがれ声で)
書き文字で「ぼぇ〜っ」とか書かれてますよw
おそらくご存知の、「ドラえもん」に出てくるジャイアンの歌の原作版擬音表現だな。
期待が高かっただけに、一気に脱力する三人。
さわ子「テヘッ 練習させすぎちゃった」
唯「声枯れちゃった」
律「かわい子ぶってもだめだー!!」
こうなっては、今回唯はボーカルとしては起用できない。
幸いなことにまだこの場にいた和さん、ボーカルの変更を提案する。
そして、律ちゃんとムギちゃんの視線は自然と、作詞者・澪さんに。
さわ子「そうねぇ…澪ちゃんなら歌詞覚えてるだろうし…」
律「歌詞作った本人だしな」
こうして澪さんは、状況によりなし崩し的に学園祭でボーカルをやる羽目になった、と。
唯「本番まで、あと三日」(しわがれ声で)
次回予告
本番前の練習についてのやりとりと思われる台詞の数々。
次回はいよいよ、学園祭ライブの幕が上がる…?
感想
第五話は、とりわけ目まぐるしく作劇上のミッションが切り替わる話だった。
学園祭でライブを行いたい
→ステージを借りたいが、正式に部として登録されていないことが判明
→正式登録の手続きのために、顧問が必要
→さわちゃんの過去を知り、恫喝する形で顧問に
→顧問となったさわちゃんによる演目のダメ出し。詞がない、ボーカルがいない。
→詞が完成。しかし作詞者の澪はボーカル役を拒否。
→唯、立候補によりボーカルに。しかし、ギターを弾きながら歌うことができない。
→さわちゃん、唯を特訓。その間、学園祭ステージの手続きはほぼ滞りなく進行。
→決定直前、特訓により唯の声が枯れたことが判明。やむなく作詞者の澪を代理ボーカルに決定。
…とまぁ、これだけのプロットが30分(実質20分)に、実にテンポ良く詰め込まれている。
しかも事の起こりである、冒頭部分のミッション「学園祭でのライブを行う手続き」は、ちゃんと話の最後までにクリアされている。これだけのミッションのうち、投げっぱなしのものが一つもない。こうした構成のセンスには恐れ入るばかり。
やはり気に入ったのは、さわちゃんがレスポールを手にして豹変するくだりの独白。あれだけの言葉に、ギタリストとしてのさわちゃんが詰め込まれているように感じた。
ただ、こうした話は見ている分には面白くて大歓迎なんだが、情報量がとにかく多く、こうやってレビューを書いていると疲れるw まぁ、面白い話でレビュー書いて疲れるのは大歓迎なので、ぜひこの勢いを維持していただきたいところ。