「成立」の解釈

昨晩twitterであるツイートをしたところ、えらい勢いでRTされてしまい、Mentionでちょくちょく疑問や質問をいただいたので、自分の力のおよぶ限りの解説をさせていただいているのですが、毎回140文字以内に収めるのが大変なのと、あまりに多くの方に興味を持っていただいたため、対応が大変になってきましたので、こちらに簡単な解説でも書いておくことにしました。


とはいっても、自分は日本史の研究者とか専門家ではないので、あまり詳しいところまでは説明できません。また、個人的な解釈が混ざりこんでいる可能性があることもあらかじめおことわりしておきます。


して、件のツイートはこちら。

Twitter. It's what's happening.
【若い方へ】 わりと歳のいった人が稀に「いい国作ろう〜」みたいなネタを呟きますが、一定の年代まで学校では鎌倉幕府の成立年を1192年とし「いい国作ろう鎌倉幕府」という語呂あわせとともに教えていました。現代の解釈では皆さんの習った1185年で合ってますので心配御無用です。


私を含む一定の世代まで、社会科での「鎌倉幕府成立」の年号は、「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」の語呂合わせと共に、1192年と教わってきました。これは源頼朝が朝廷から征夷大将軍に任ぜられた年であり、この時点を鎌倉幕府の成立と見なす観点からの解釈によるものです。


しかし現在では、それ以前と以後で大きく社会の有り様を変えたのは頼朝が壇ノ浦で平氏を滅ぼし、守護や地頭を各地に置き実効的な支配体制を築き上げた1185年である、という解釈が主流であるようです。1192年の征夷大将軍任命はその実効支配に対する事後追認的なものである、といったところでしょうか。

【参考】鎌倉幕府 - Wikipedia


これを踏まえ、現在の中学校歴史教科書の記述も従来とは変更されています。
2008年の段階で既に教科書にはその記述があったようです。

【参考】asahi.com:中学校の歴史 1192は違うの?鎌倉幕府成立 - 教科SHOW - 小中学校 - 教育

この教科書の変更があって以降の教育を受けた世代は、鎌倉幕府の「成立」を1185年と習うことになります。特に何か新事実が出てきたりしたわけではありませんが、

何をもって「幕府の成立」とするか、という解釈が変わった

ということです。我々の世代が受けた教育が大きく内容的に誤っていた、というわけではないのでご安心ください。ただ、征夷大将軍任命という「形式」よりも「実効支配の開始」を重視するようになった、ということらしいです。


もっとも、教科書の改訂があって以降も、教える先生によっては1192年の征夷大将軍任命のほうを重視したり、あるいは先生の側の認識をアップデートできていなかったりで、1192年と習った若い方もいるようです。何をもって「成立」と見なすかが違うだけで、1185年としても1192年としても必ずしも誤りではありません。


重要なのは、歴史における出来事の経緯を理解すること、だと思っています。