今回は実に申し訳ないことに、翌第十一話の放映後に第十話のレビューを発表することになってしまった。要因としては、第十話のまとめ方に悩んだ、というのが大きい。
なお、過去の放映回についてのレビューはこちら。
第一話感想 第四話レビュー 第七話レビュー 第二話感想 第五話レビュー 第八話レビュー 第三話レビュー 第六話レビュー 第九話レビュー 1〜2話については、漠然とした感想の体をとっています。
アバンタイトル
憂「こんにちは! 平沢憂です。
今日は梓ちゃんと初めてのお出かけです!」
夏休み、梓と遊びに出た憂。
高校入学時に同じクラスになり、新歓ライブに誘った相手。
そのまま軽音部に入り、姉の唯と並んでギタリストを勤める友達、梓。
待ち合わせ場所で合流し、ファストフード点で食事をしながら、来るべき軽音部の合宿について話す。憂自身は軽音部ではないが、姉の唯から話は訊いていた。
三泊四日にわたり遠出し、軽音部のキーボーディスト・琴吹紬の家が持つ別荘に宿泊する、軽音部の合宿。憂は昨年の合宿について、姉が楽しそうに語っていたのを思い出す。
憂の話を聞いた梓は自分なりに充実した練習ができると解釈しているようだが…昨晩新しい水着を嬉しそうに見せていた姉の姿から察するに、多分その想像は実態とかけ離れているのだろう。これまでの経緯から、梓自身もその想像について今ひとつ心配な様子。
ともあれ、軽音部二年目の夏。
合宿の季節が再びやってくる。
梓から見た軽音部は…
今回は、Aパートの始まりにサブタイトルコールが据えられている。
これまでの話では、こうした構成は無かったな。なんとなく珍しさを感じる。
アバンタイトルに引き続き、ファストフード店で食事しながら話す憂ちゃんとあずにゃん。普通に高校生の友達同士、といった感じだ。
姉の唯さんが部活でどんな様子か気になっていたのか、憂ちゃんはあずにゃんに訊いてみるが…
憂「お姉ちゃん、軽音部でどんな感じ?」
梓「う、うん…ちょっとあれかな…」
憂「え? なになに?」
梓「全然練習しないし、
変な渾名つけてくるし、
やたらスキンシップしてくるし…」
…あずにゃんの印象は今ひとつ良くない…いや、悪いわけではないのだが困惑している様子。今まで唯さんのような人が、あずにゃんの周りにはいなかったのかもしれない。
憂さんとは逆に、今度はあずにゃんが唯さんについて、自宅でどう過ごしているのか訊いてみた。
梓「今日、唯先輩は何してるの?」
憂「家にいるよ?
お姉ちゃん、暑いの苦手だから…冷房も嫌いだし」
梓「…ダレてる姿が目に浮かぶ」
憂「最近は一日中ぐったりしてるよ」
…なんですか、その俺みたいな過ごし方はw
ただ、俺は冷房大好きだけどな(←誰も訊いてない)。
憂ちゃんの話を聞いたあずにゃん、唯さんの自宅での様子を想像する。
これがまた、第三話で軽音部一同が追試勉強のために唯さんの家に向かう途中に想像した、「想像上の平沢姉妹」の様子にそっくりだw
梓「…私、澪先輩みたいなお姉ちゃんだったら欲しいな」
憂「澪さん、優しくてかっこいいもんね」
あずにゃん的には、澪さんが一番信頼できる模様。まぁ、入部に至るまでの経緯を考えれば無理もない。で、澪さんが話題に上れば、律ちゃんの話が出ないわけがない。
憂「律さんは?」
梓「うーん…あの人は大雑把でいい加減だからパス…かな」
律「ほぉ…誰が大雑把だって?」
あずにゃんの後ろに座っていた人物が振り返る。話題の主の律ちゃんだ。
いつのまに背後につけていたのか?
二人の話題に加わる律ちゃん。あずにゃんのこめかみをぐりぐりしながら、にこやかに憂ちゃんと話す。その間、あずにゃんんはぐりぐりされっぱなし。ひたすら「ごめんなさい」を連呼して許しを請う羽目にw
で、憂ちゃん的には律ちゃんは誰かとほぼセットで行動しているイメージがあるらしい。視聴者的にもそうで、大抵澪さんが近くに居て、唯さんがいる場合は一緒に悪ふざけに走り澪さんに突っ込まれる、という図式がほぼ定型という印象がある。
で、澪さんはこの日夏期講習に行っていて、律ちゃんは一人らしい。しかも律ちゃん自身は夏期講習に出る気などまるでなし。
とりあえず律ちゃんのお仕置きから解放されたあずにゃん。先ほどまでに唯さん、澪さん、律ちゃんと話に上れば、ムギちゃんの話題が出ないわけがない。
梓「ところで、ずっと気になってたんですけど、
ムギ先輩って自前のティーセット持ってきたり、
別荘持ってたり、すごいお嬢様なんですか?」
律「そうだぞー! 家には執事さんがいて、
長期休暇には外国行ったりしてるんだぞ〜」
梓「本当ですか!?」
律「…だったら面白いよねー」
梓「知らないんじゃないですか」
…と、この段階では律ちゃんの想像上のムギちゃんでしかないわけだが、思いつきが重要な行動原理である律ちゃん、ムギちゃんに連絡の上、家に遊びにいこうとする。しかし…
ムギちゃんの携帯はつながらない。やむなく自宅の固定電話にかけてみるが…??
男の声「はい、もしもし」
律「つながった…あ、紬さんのお父さんですか?」
男の声「いえ、私、琴吹家の執事でございます」
律/梓「(本当に執事いたーッ!?)」
…どうやら、ムギちゃんの家には実際に執事さんがいる模様。
ちなみに、台詞で名前は出ていないが、ワンセグの字幕では執事さんの名前が「斉藤」となっている。この名前は原作でも出てくるな。
律「え、ええと、紬さんはいらっしゃいますかしら?」
梓「せ、先輩、落ち着いて!」
斉藤「紬お嬢様はただいま、フィンランド避暑中でございます」
律「そうですか、ありがとうございます。失礼しました」
…完璧に事前の予想と合致した予想外の展開に声を上ずらせながら、電話を切る律ちゃん。
律「…ほらみろ! 私の言ったとおりだろ!?」
憂/梓「おお〜」(拍手)
自宅に執事がいるお嬢様で、長期休暇には外国に行く──という律ちゃんの「口からでまかせ」は、完全に事実を言い当てていたわけだが、よもやそこまでとは思っていなかった一同。
で、なんとなくこの会話で疲れた律ちゃん、憂ちゃんの「スイカありますよ」の声につられて場面は平沢亭へ。もちろんあずにゃんも一緒。
憂「ただいまー! お姉ちゃん?」
律「スイカ…」
憂「律さんと梓ちゃんが来たよ」
帰宅を告げる憂ちゃんの声。しかし唯さんは…
…ひんやりしたフローリングの床に寝そべって、力なく団扇で涼をとっている。
律「(なんかホッとするな…)」
梓「(聞いてたとおりだ…)」
憂ちゃん的には、そんな姉の姿が可愛くてたまらないらしいのだが、律ちゃんとあずにゃんの感想はそれぞれ違うようだ。
アバンタイトルから続くここまでのくだりは、第八話で登場し前回第九話で入部したあずにゃんが、4人の先輩達に対してどのような認識を抱いているかについてまとめている。今回第十話は、合宿の前と後で、あずにゃんの抱いているこの認識がどう変わるのか、がテーマになるわけだ。
合宿のお誘い
律「失礼しまーす」
唯「あ、いたいた」
場面は変わって夏休み中の学校。
制服を着た唯さんと律ちゃんが、職員室を訪ねる。顧問のさわちゃんに用事があるようだ…が、当のさわちゃんは机につっぷしてぐったりしている。
律「夏休みなのに大変ですねぇ」
さわ子「研修とかいろいろあってねぇ…あなたたちも練習?」
唯「はい」
生徒たちが夏休みでも、先生方は仕事だったりするわけで。
しかしまぁ、今日の用事は単なる顔見せではないようだ。
律「軽音部で合宿するんだけど」
唯「先生も来るかなぁと思って」
さわ子「合宿ねぇ…」
律「…めんどくさそうな顔」
さわちゃんはどんな合宿を想像したのか知らないが、どうにも気乗りしないらしい。
唯「じゃあいいよ! 私達だけで行くから!」
律「声かけなかったら怒るのに、声かけたらこれだー」
…どうやら、昨年のクリスマスパーティの経緯(第七話参照)から一応声をかけてみた模様。まぁ、ここまで一年さわちゃんを顧問に据えてきた軽音部、その扱い方を心得ていないわけがない。
唯「泳いだり、バーベキューしたりできるのにねー
わぁー楽しみだねー合宿!」
…などと、去り際に聞こえよがしに言ってみせる唯さん。遊べそうな話を逃してしまったさわちゃん、慌てるも後の祭りというやつか。
集合、そして、準備
律「おーし!
久しぶりにみんなそろったことだし、
合宿の買い物に行くか!」
どうやら、夏休み中軽音部全員が揃うのは久しぶりである模様。この機会にと合宿の買出しを宣言する律ちゃん。
梓「…ところで、何を買いに行くんですか?
新しい機材とか!?
澪「えーと…」
…まぁ、「普通部活動の合宿の買い物」と言ったらそういう発想になるわな。
期待するあずにゃんだが…
唯「水着だよ?」
梓「(遊ぶ機満々!?)」
この軽音部では当然こうなる。いつものことながら呆れるあずにゃん。
梓「…どうせこんなことだろうと思いました」
律「別にずっと遊ぶわけじゃないよ」
梓「信用できないです!!」
律「何で!?」
…律ちゃん、「日頃の行い」という言葉を知っているか?w
そんな感じで口を尖らせてカリカリするあずにゃんだが、澪さんがたしなめるとすぐ納得してしまう。澪さんに頭を撫でられて笑顔になるあずにゃん。
律「(この寂しさは何だろう…)」
部長・律ちゃん、形無しw
…とまぁ、このあたりの遣り取りは原作どおり。
アバンタイトルで示された、あずにゃんの先輩達に対する認識が、こういう日常のやりとりで具体的に現れている例でもある。
合宿、開始…なんだが。
どこまでも高く青い、澄み渡る夏の空。
その下で、目を丸くして驚く唯さんと律ちゃん。顔には出さないが、澪さんとあずにゃんも驚いているに違いない。
彼女らの目の前にあるのは、大きな別荘。巨大な資産を誇る、琴吹家がいくつか所有する別荘の一つだ。今回は二回目の合宿話なので、第四話のような移動シーンは割愛されている模様。
律「こりゃまた一段とすげえなー」
唯「これが、去年言ってた、借りられなかった別荘だね!?」
紬「ごめんなさい…その別荘は今年もダメだったの。
多少狭いと思うけど、我慢してね?」
唯/澪/律「(まだ上があるのか!?)」
昨年の経緯に関しては第四話を参照して欲しいが、ムギちゃんはもっと大きな別荘を使いたかったらしい。実のところ多少裕福とはいえ庶民である他のメンバーにとっては、この別荘の規模でも充分すぎるほど贅沢であるはずなのだが、そこら辺は根本的に感覚が異なるお嬢様だ。
律「よーし! 遊ぶぞー!」
唯「おーっ!」
澪「うぉーい!!
遊ぶのは練習してから!!」
…そして、着くなりいつの間にか水着に着替え、遊びに出ようとする唯さんと律ちゃん…だが、そんな二人を後ろから呼び止める澪さん。昨年もそうだが、まず遊びが入るのはこの合宿の風物詩…まだ二回目だが。
律「えーっ」
唯「遊びたいー!」
澪「それじゃ多数決にしよう。私は練習が先!」
唯/律「遊ぶ!」
梓「練習がいいです」
練習が先か、遊びが先か。
多数決に持ち込んだ澪さん。澪&梓 vs 律&唯 の二票ずつに分かれた。
残る一票を持つムギちゃんだが…
紬「遊びたいでーす」
梓「(まさかの裏切り…!!)」
このムギちゃんの裏切りにより、遊び優勢。ひとまず遊ぶことに。
…まぁ、ムギちゃん的に大事なのが、この軽音部の仲間と楽しく過ごす時間であることは、これまでの話でも幾度となく演出されてきた。この「裏切り」はその一つかもしれない。
水を得た魚のように駆け出す唯さんと律ちゃん。残る三人はその後をゆっくりとビーチに向かう。二人の先輩──澪さんとムギちゃんに並んで歩きながら、あずにゃんは考えた。
梓「(でも、ムギ先輩の遊びってもしかして…)」
合宿前に判明した、「家に執事がいて、海外避暑に出かけるお嬢様」であるムギ先輩。合宿の場となる別荘もとんでもなく豪華で、さらに上があるという。そんなムギ先輩の「遊び」とは一体どんな…?
その脳裏に浮かぶのはビーチチェアでくつろぐムギちゃんと律さんの姿。風を切り海を駆ける自家用のクルーザーではしゃぐ律ちゃんと唯さん…と、あずにゃん的な金持ちの遊びのイメージはそんな感じ。
梓「…まさかね」
自分で馬鹿馬鹿しい空想だと思った矢先、岬の影から姿を現すクルーザー。そしてビーチに置かれたビーチチェア、想像どおりなのか…とムギ先輩を見れば、
紬「いらないって言っておいたでしょ!?
浜辺にあるものをすぐに片付けて!
お船もいらない〜!」
澪「ムギ…」
梓「先輩…」
…携帯電話で、まるで子供のような口調としぐさで誰かに文句を言っているムギちゃん。普段学校では、こんな面を見せることのない彼女。きっと家ではこんな感じなのだろうな。
この作品見るたびに、スタッフがムギちゃんというキャラクターに注ぐ隠れた愛情が垣間見えるのはこんなシーンの時だ。
波打ち際、ひたすら楽しそうに、満面の笑みを浮かべてビーチボールを追いかける律ちゃんと唯さん。それとは対照的に、ふくれっ面で二人の様子を見ているあずにゃん。まぁ、真面目っ子の彼女にしてみれば集中して練習できると思っていたのがこれでは不満も募ろうというもの。ムギちゃんは「よいしょ! よいしょ!」と何やら謎の踊りを踊っているw
梓「(ちゃんと練習できるのかな…)」
目下、彼女の心配事はそれ。そんなあずにゃんに、全力で遊んでいた二人が声をかける。
唯「あずにゃ〜ん」
梓「(ん?)」
唯「あずにゃんも一緒に遊ぼうよ!」
梓「結構です」
律「…さてはスポーツとか苦手な人?」
梓「そんなことありません! やってやるです!」
まんまと律ちゃんの挑発に乗せられ、遊ぶことになるあずにゃん。
唯さん、律ちゃんに加わり、ビーチボールを追い掛け回す。
紬「梓ちゃんも、すっかりみんなと仲良くなったね」
澪「そうかな…」
澪さん的には、良いように手玉に取られているように見えるのか。まぁ、俺にもそう見えるがw
場面は変わり、磯を注意深く歩く澪さんに、あずにゃんが水の中を覗き込みながら話しかける。
梓「…澪先輩」
澪「うん?」
梓「フジツボの話って…知ってます?」
蒼白になる澪さん。フジツボ再び。
軽音部の合宿にはフジツボ話が付き物ですw
梓「昔、フジツボで足を切った少年が…」
澪「うわぁぁぁああぁぁあぁあ!」
梓「あ、あの…澪先ぱ…」
絶叫を上げ、耳をふさぎしゃがみこんでしまう澪さん。
事情のわからぬあずにゃんがその姿を見てうろたえている間に、澪さんは走り去ってしまう。取り残されたあずにゃんに向かって律ちゃんがサムアップ。離れて遊んでいるように見えても、しっかりと澪さんの様子をチェックしているあたりが律ちゃんらしい。
他にもスイカ割りをしたり、唯さんを砂に埋めたり、唯さんが巨大な昆布を捕獲したり、ムギちゃんが今年もまたサンドアートを披露したり、おやつをねだったり澪さんを驚かせて気絶させたり。ちなみにムギちゃん、今年は日本の城ですかw なお、天守閣のデザインは大阪城。
そして唯さんと律ちゃんは昨年の「無人島漂着ごっこ」と同様に、勝手な設定を作って遊び始める。今年は「新大陸到着ごっこ」ですかw
とにかく太陽の高いうちは全力で遊ぶ、それが桜高軽音部の合宿…って、いいのか?w
唯「ふは〜」
律「遊んだ遊んだ〜もうご飯食べて寝ようよ」
澪「…練習はどうした?」
全力で遊んだ唯さんと律ちゃん。何しに来たんだw
澪さんの突っ込みも当然といえば当然。
梓「やっぱり遊ばずに先に練習したほうがよかったんじゃないですか?」
律「…梓が一番遊んでたじゃん。真っ黒んなって」
梓「私はちゃんと練習もするもん!」
てなわけで5人のうちで一番遊んでいたのはあずにゃんだった。
昨年の合宿では澪さんが一番楽しそうに遊んでいたわけだが、どうも桜高軽音部の伝統として、練習の充実を最も主張する者が合宿で一番遊んでいるというパターンが確立しかかっている模様。
律「じゃあ一晩中?」
梓「う…するもん!」
…意地になったあずにゃんの叫びがビーチの空に響き渡って、Aパート終了。
練習の夕べ
唯「疲れた〜」
律「おなかすいた〜」
澪「我慢しろ…」
…てなわけでBパート開始。
気密性の高そうなドアをくぐり、遊びつかれた一堂が入ったのは、この別荘のスタジオ。昨年にもまして立派な設備。
梓「うわ〜…すご〜い!」
澪「確かに凄いな…」
梓「あんなアンプ、使ったことないです!!」
去年の合宿(第四話参照)で唯さんが使用していたのは VOX のコンボアンプ(機種特定してません。申し訳ない)、澪さんは Peavey の MAX158だったが、今年のスタジオには、ギター用では Marshall の、ベース用では Ashdown のスタックアンプが置かれている。日本の住宅事情で一般家庭に置こうものなら(しかも都市部なら)まず間違いなく近所迷惑の筆頭になりそうな機材だ。
ギターアンプは Marshall JCM900 系か? ベースアンプはヘッドが Ashdown の Klystron 500 head だな。キャビネットはわからんが、Neo 410h cabinetっぽい。
【参考】
http://www.marshallamps.jp/jcm900.html
Kandashokai Corporation Official Web Site
Kandashokai Corporation Official Web Site
据え置きのドラムセット。バスドラムには "SONOR" のロゴが。これはドイツのメーカーで、このセットは SONOR Force3007 あたりか? ドラムは詳しくないんで誰かフォローが欲しいところ。
【参考】
SONOR :: SONOR
そして、いつのまにかそのドラムスローンに座っている律ちゃん。疲れた疲れたと言っていたさっきとは全く違う元気な様子で…
律「澪! 早く練習しようぜ! スネアが新品だ!」
澪「(現金な奴…)」
…楽器名とか詳しくない人のために一応解説。
ポップロックなどのドラムを聴くと、大抵ドラムが「ズン/タン/ズン/タン」という感じで鳴っているが、この「ズン」に当たる低い音を出すのが、先ほど "SONOR" のロゴが描かれていた「バスドラム」(あるいは「キック」)で、これはドラマーの足元に置かれペダルを踏んで鳴らされる、最も大きなドラム。で、「タン」にあたる乾いた明るい音を出すのが「スネアドラム」。大抵の場合ドラマーの手元、正面左に配置されており、フィルインなどでドラマーがおそらく最も頻繁に使用するドラムとなる。
…で、律ちゃんはこのスネアが新品だというので喜んでいるわけだ。
そんな感じで理由はともかく、なんとなくやる気が出たかに見える一同。
まぁ、凄かったり新しかったりする機材が使えるってだけでも結構やる気は変わってくるのは確かだったりする。
唯さんもレスポールのストラップに肩を通し、練習のスタンバイ…Tシャツの「パラダイス」の文字が気になるがそれは置いておこうw
その唯さん。ふと、もう一人のギタリスト・あずにゃんを見ると…その愛器 Mustang の赤いマッチングヘッドに、何かクリップのようなものがついている。
唯「あずにゃん、それな〜に?」
梓「はい? これですか? ただのチューナーですけど…」
ここであずにゃんが使っているチューナーは、ディスプレイ下に YAMAHA ロゴが入っているところを見る限りでは、おそらく YAMAHA TD-30M として発売されていたものだと思われる。これは KORG AW-1 というチューナーのOEM製品。あずにゃんの持っているやつのカラーはパールホワイトだな。
【参考】
http://yamaha.jp/product/winds/tuners/td-30m/
販売完了製品 | KORG (Japan)なお、現在では生産終了しており、KORG AW-2/AW-2g という後継機種が出ている。
チューナー / メトロノーム | KORG (Japan)
ちなみに、俺も KORG AW-1 は愛用している。カラーはあずにゃんと同じパールホワイト。
唯「へぇ〜チューナーって言うんだ」
梓「これでチューニングするんですけど…唯先輩、チューナー知らないんですか?」
唯「うん。初めて見た」
…さて、ギターというのは非常に環境に左右されやすいデリケートな楽器だ。まずほとんどの場合木でできていおり、周囲の湿度によってネックの木材が膨張/収縮する。また、エレキギターやフォークギターは鉄弦を使用しており、弦の素材である鉄は気温によって伸び縮みしやすい。これらの結果、弦のテンション(張力)が変わって音程が狂ってしまう。
このため、演奏前のチューニング(調律)はギタリストにとって欠かせない仕事の一つになる。どのぐらいの頻度で行われるかといえば、「演奏前には毎回必ず」という頻度だ。
実のところこれはギターに限らず、弦楽器全般に言えることでもある。
チューニングを行うにあたっては、音叉を使った古典的な方法もあるが、現代においてはもっぱらこうしたチューナーがギタリストたちの間で使われている。
…つまり、現代においてギタリストがチューナーを知らないことは通常あり得ないのだが、そこはそれ、諸々の意味で型破りなギタリストである唯さん。市井のギタリストの常識など通用しないw
梓「…じゃあ、どうやってチューニングを?」
唯「え? 適当に…(レスポールのペグを操作)…ほら」
梓「(絶対音感…!? 凄いのか凄くないのか分からない人だ…)」
…まぁ、こんな人は今のところお目にかかったことはないw
ちなみに、ギターのチューニング方法については至るところに情報が転がっているが、ここでは日本のギターメーカー "ESP" の WebSite に掲載されているページを紹介しておく。
さて、一同の準備が整ったところで、新しいスネアで気合充実の律ちゃん、カウントとともに練習開始。
夕食はバーベキュー
景色がオレンジに染まる夕方。
軽音部員たちの練習もひと段落ついたようだ。
梓「今の、すごくいい感じでしたよね!?」
紬「ピッタリ合ったね!」
梓「(みんな、いつの間に練習してたんだろう…?)」
唯さんの「ふんす!」や皆の表情から察するに、最後の合わせは会心の出来映えだった模様。
澪「律もちゃんとリズムキープできてたな。特訓でもしたのか?」
いつも走り気味が持ち味の律ちゃんのドラムだが、今回はメトロノームのように正確だったようだ。その律ちゃんは…と?
律「…おなかがすいて力が出ない」
澪「(おなかすいてるから無駄な力抜けたのね…)」
…どうも空腹時以外は力みすぎの模様w
空腹に耐えかねて夕食を欲する律ちゃん。ムギちゃんも賛成。どうやら皆お腹がすいていたようだ。
ちなみに、楽器演奏というのは結構運動量が大きい。厚生労働省 戸山研究庁舎の公開している「身体活動のメッツ(METs)表」によれば、立位でのギター演奏は、同じ時間キャッチボールを続けたのとほぼ等しい運動量(3.0[METs])があるそうだ。
【参考】身体活動のメッツ(METs)表
METs とは、運動量の指針となる値。この値から消費カロリー等を計算できるそうな。
ベースはおそらくギターとほぼ同じと思われるが、キーボードは類似する「ピアノ、オルガンの演奏」から見積もって2.5[METs]と若干少なくなる。そしてドラムは最も激しく、表中から類似する項目を探して類推するに3.5〜4.0[METs]ぐらいと思われる。
つまり、この中で一番律ちゃんが運動しているので、お腹が空くのも無理はない。
そんなわけで、夕食タイムに。
唯「戻ったよ〜」
律「おっかえりー!」
紬「ただいま!」
唯さん、ムギちゃん、そしてあずにゃんの三人が買出しに出かけていた模様。律ちゃんと澪さんは留守番か。唯さんがとりだしたキャベツに執拗な感心を示し、ひたすら執着する律ちゃん。そんなにキャベツ好きかw
そんな、膨大な食材を前にしてはしゃぐ二年生たちを見ながら、あずにゃんは改めて思う。
梓「(いつも遊んでばかりなのに、演奏すると何かいいんだよなぁ…)」
そんなことは知らず、キャベツを離さない律ちゃん。
「キャベツの神様」ってなんだw 婆羅陀魏山神か何かか?(→参考)
梓「じゃあわたし、コンロの火を見ます」
澪「ほら! 後輩が率先して頑張ってるんだから!」
律「…わかったよ」
あずにゃんの手前、落ち着かないわけにいかない律ちゃん。
で、キャベツから離れた律ちゃんと唯さんは…
唯「うぅう〜にゅふぅ〜(泣きながら)目が痛い〜」
律「唯、大丈夫か?(涙声)」
…大粒の涙を流しながらタマネギを切る。しかし、こうした状況を甘受する二人ではない。タマネギの催涙性ガスで涙が止まらないのをいいことに…
唯「律ちゃん…」
律「唯…」
唯「死ぬときは、一緒だよ?」
律「あぁ…」
…なにやらメロドラマっぽいごっこ遊びを始めましたよ。
タマネギの涙で遊ぶキャラというのは新しいんではないか?
画面奥で、あずにゃんとムギちゃんが二人を見ているが、ムギちゃんの中でどんな妄想が渦巻いていたのかは知る由も無いw
炊飯器のご飯が炊き上がり、おにぎりを作り始める澪さんとあずにゃんだが…二人の作るおにぎりの大きさが著しく違うw
澪「(こんなに違いが…)」
律「…澪ちゃんの手が大きいのかしら?」
澪「うるさい!」
そういえば、アニメではあずにゃんが Mustang を使う理由が語られていない。
原作では、「手が小さいからネックが細いギターじゃないとダメ」という理由が語られている。Mustang はもともと Fender がステューデント・モデルとして発売した経緯もあり、ショートスケール指板の細いネックを持つギターだ。ここで言う「スケール」は、ギターのブリッジサドルからナットまでの長さのこと。詳しい説明はオンライン楽器店「サウンドハウス」の WebSite に掲載された「ギター・メンテナンス講座」に譲ろう。
【参考】スケールの種類|サウンドハウス
あずにゃんの Mustang は、ここでもショートスケールの代表として扱われている。つまり、それだけあずにゃんの手が小さいということでもある。唯さんのレスポールはミディアムスケールだが、あずにゃんが初めて軽音部に現れたとき、借りたレスポールを弾きこなしていたのは、それだけ技量がこなれている、と解釈すべきだろうな。
まぁ、澪さんとあずにゃんの手の大きさがずいぶん違うのはさておき、いよいよ串に食材を刺す段階になった模様…って、律ちゃん、肉だけの串を作ってますよw 焼肉とかすき焼きならば「肉ばっかり食べて!」パターンのバーベキュー版ですな。澪さんはまだ手の大きさを気にしている模様。多分、澪さんの手はちょっとは大きいだろうが、あずにゃんの手が小さすぎるのだと思うぞw
そして、準備も終わり楽しい食事の時間。紙コップを掲げて乾杯し、串の肉にかぶりつく。そんな中、あずにゃんはいつの間にか満面の笑顔になっている。
…台詞もなく、淡々とカットが切り替わるが、結構重要なシーンだと思う。特に、最後を締めるあずにゃんの笑顔が。合宿が始まってから、二言目には「練習」を口にしていたあずにゃんが、この食事のときには肩肘はらず楽しんで、こんな笑顔を見せたりする。その心境を想像する上で、とても重要なカットだ。
夏の夜には花火が似合う
唯「あぁ〜おいしかったぁ」
梓「おいしかったです」
律「最高だぁ〜」
食事の時間も終わったようだ。唯さんは満足するまで食べた模様。太るんじゃないか、という心配は、今のところ彼女には不要であるようだ。第七話終盤の年始参り参照。
紬「じゃあ、花火やろう?」
落ち着いてくつろぐ皆のところに、ムギちゃんが花火を持って現れる。
タイミングを見計らっていたかのごとき現れ方。実は待ちかねていたのか? 去年は花火使ってステージごっこやって、派手に遊んでいたしな。
今年の花火は、去年とは逆の趣向。夜の暗がりの中、儚げに火花を散らす線香花火は実に風流な日本の夏の風物詩。
律「最後消えるとき、もうちょっと頑張れ頑張れってなるよなぁ。
頑張れ〜頑張れ〜!」
紬「うん!」
律ちゃんの言葉にうなづき、新たに火をつけた線香花火に声援を送り始めるムギちゃん。そんなムギちゃんの姿は、今まであずにゃんが知らなかった「ムギ先輩」の一面。
唯「あぁっ! 律ちゃん消えちゃうよ!?」
律「よーし! そんなときは合体で大きくするんだ!」
唯「うん!」
律/唯「合体! 線香花火マン!」
紬「あっズルイ!」
澪「…アホ」
…律/唯コンビは相変わらずアホな遊びをやってます。
こっちはあずにゃん的にも見慣れてるよなw
風物詩は一通り網羅──で肝試し。
花火で遊び終わり、夕食の時と同じように率先してバケツを片付け始めるあずにゃん。
しかし、軽音部の夏の遊びはまだ終わらない。
律「肝試しをやろう!」(力説)
唯「おーっ!」
澪「次から次へと…」
どうみても夏の夜を遊び倒すつもりの律ちゃん。今度は肝試しを提案。唯さんも全力で同意しているが、澪さんは呆れた口調。まぁ、澪さんは単に呆れただけではないと思うが…
律「いいじゃん! やっぱり夏で合宿といえば、肝試しだよね!」(キリッ)
澪「私はやらないぞ」
しかし律ちゃんは澪さんを挑発し、肝試しに誘い込む。
どうやら練習でなかなか夕食に入れなかったことについて報復するつもりらしいw
そして…明かりもない夜の林の中を、懐中電灯を頼りに歩く澪さんとあずにゃん。
口では威勢のいいことを言っているが、あずにゃんが痛みを訴えるほどその手にしがみついていることから、虚勢であるのはまるわかりw
そこに、うめき声と共に現れ、追いかけてくる白い服を着た女性の人影。澪さんは楳図かずお調恐怖の形相を浮かべ絶叫し、気絶してしまう。ちなみにあずにゃんも驚いているが、むしろ澪さんの形相と絶叫に驚いているw
…で、追いかけてきたのは、
梓「せっ…先生!? どうしたんですか?」
さわ子「よ…ようやく会えた…」
唯「…あれ? さわちゃん先生?
どうしたの? ていうか、なんでいるの?」
澪さんの絶叫を聞きつけて追ってきたと思しき唯さんとムギちゃん。
唯さんの疑問に答えて曰く、
さわ子「後から合流して、みんなを驚かせようと思ったんだけど、道に迷って…」
梓「…驚かせようっていう目標は達成できたみたいですけど」
…おそらく、当初予定とは別の形で。澪さんは依然気絶したまま。
ムギちゃんが揺り起こそうとするが、状況変わらずw
梓「(澪先輩って、こんなに怖がりだったんだ…)」
…認識を新たにしたようだ。
そして、この騒ぎの中、忘れられている人が一人。
律「…誰もこねー」
…用意したこんにゃくはむなしくぶらさがっていた。
大浴場
昼間のビーチから練習をはさんで、夜まで遊び倒した一同。
さわちゃんも加わり、大浴場で入浴。
日焼け跡が痛くて湯船に浸かれないあずにゃんを無理やり押し込む唯さん。鬼かw
まぁ、意図してのことじゃないんだが。
紬「唯ちゃん少し痩せた?」
唯「ううん? 前にも言ったと思うけど、私、いくら食べても体重増えないんだ」
紬/澪/さわ子「うらやまし過ぎる!」
唯「えっ!? さわちゃん先生まで!?」
詳しくは第七話参照。こうして意図せず敵(笑)を増やしていく唯さん。
湯気で曇った浴室内、普段メガネをかけて生活しているさわちゃんは、澪さんとあずにゃんの区別がつかない様子。原作ではそんなさわちゃんに「作者批判?」という書き文字の突っ込みが入っていたがw
さわ子「…胸の大きさで判断すればいいじゃない!」
…いや、今は日焼け度合いでいいだろw あとは身長。
誰のものかわからぬ一撃で、湯船を漂う屍と化すさわちゃん…って、別に死んでないがw
皆が寝静まった夜…
夏の夜を彩る無視の声。夜空を横切り流れる銀河。
すっかり夜も更け、あれだけ騒いでいた軽音部一同も眠りにつく頃。
律「…キャベツうめーっ!」
…夢の中でもキャベツに執着しているのか、謎の寝言を突如叫ぶ律ちゃん。
昨年の合宿はムギちゃんの寝言に出てきた「ゲル状」があったが、今年は律ちゃんの「キャベツ」か。音声をよく聴くと、やっぱりムギちゃんは寝言で「ゲル状」と口走っているんだがw
映し出される布団は5つ。よく見ると一つは空。もう一つは画面外でよく見えない。
…どうやら、あずにゃんは夜中に起き出してトイレにいっていた模様。まぁ、さすがに就寝時だけあって、普段ツインテールの髪を下ろしている。
半分だけ起きた状態で寝床に戻ろうとするあずにゃんだが、練習のとき使っていたスタジオの扉から、光が漏れているのに気づく。誰かいるのか…と覗いてみれば──
スタジオの床に座り込み、一人練習する唯さんの姿がそこにあった。
アバンタイトルからAパート冒頭で、唯さんのことを「全然練習しない」と言っていたあずにゃんにとって、この姿は意外だったんだろうな。
次のカットでは、もうあずにゃんは自分の Mustang を持ち出し、唯さんの練習に付き合っている。
唯「ごめんね、私の練習につきあわせて」
梓「全然気にしないでください。
私も唯先輩ともっと一緒に練習したいと思ってたんです」
唯「ありがとう〜」
普段練習してる様子もないのに、さっきスタジオで合わせたときにいつ練習しているのかとあずにゃんが不思議に思ったほど日々上達している軽音部、特に唯さん。
きっと今までも、日々こうやって一人で練習してたんじゃなかろうか。特に唯さんは五人の中で最も楽器経験が少ない。ギターを始めてまだ一年ちょっと。普段の姿からは想像もつかないが、唯さんなりに皆に追いつこうと必死だったんじゃないかと解釈した。そう考えると、結構熱いものを持った子だな。
そんな唯さんの、練習につき合わせて申し訳ないという言葉に笑顔で答えるあずにゃん。今まで彼女の中で軽音部は「どうにも不真面目」な印象が拭い去れなかったわけだが、実はそんなことはなくて、こうやって自分のパートと真剣に向き合う唯さんの姿がまさにあずにゃんの求めた形だったんだろうな、と。
真夜中、皆が寝静まった別荘。
そのスタジオで、ギタリスト二人だけの練習。
夜中なのでアンプは使えない。もちろんエフェクタもない。
向かい合った二人の間で聴こえるのは、生の弦が奏でるか細い音。
コードストロークより繊細なピッキングと運指を必要とする、ギターソロのフレーズ。
既に上級者の域にある梓が、今目の前にある課題のフレーズを弾いてみせる。
彼女に続き、同じフレーズに挑戦する唯。しかし梓のように、すぐ弾けるわけもない。
梓「最初はスローテンポで弾いてみればいいんですよ」
唯「…こう?」
梓のアドバイスに従い、本来よりテンポを落とし、ゆっくりと弾いてみる。
さっきは慌てるあまり思うように動かなかった指が、今度はどう動かせばいいのかわかる。
ゆっくりではあるが、唯は梓と同じフレーズを弾き切った。
唯「できた〜!
あずにゃんに出会えてよかったよ!」
弾けなかったフレーズが弾けるようになった喜びを、全身で表現する唯。
梓は最初驚いたが、そんな唯の態度はまんざらでもなかった。
あずにゃんがこのシーンでアドバイスしている、最初はゆっくり、だんだん速く、というのはソロ練習の王道。いきなり速いフレーズを弾ける人なんていない。最初はゆっくり確実に、それができたら段々速くしていけばいい。そんなバカ正直なぐらい当たり前の練習方法で、上達速度に個人差はあっても、忍者が毎日植えた木を飛び越すように毎日続けていれば、両の手が健在である限り誰でもこの方法でギターは弾けるようになる。
こうした練習を続けて、それまで動かなかった指が動くようになる、昨日までできなかったことができる自分になっていく、という感動は、何かを実直に続けてできるようになった人でないと分からないんじゃないだろうかと思う。特に楽器は、できるようになった瞬間の到来が顕著にわかるので、感動もひとしおだ。それだけでも楽器を始める価値というものがあると思えてならない。
…ところで唯さん、昨年の合宿(第四話)で学生時代のさわちゃんによるギターソロを一度聴いただけでほぼコピーして見せたわけだが、あのテクニックはどうしたんだw
日常、再び
合宿が終わり、またいつもの日常が帰ってきた。
夏休みが終わり学校が始まるまで、またこうした毎日が繰り返すのだろう。
憂「こんにちは! 平沢憂です。
今日も梓ちゃんとお出かけです!」
合宿前と同じように、梓と待ち合わせる憂。
この前と違うのは、誰だかわからないほど真っ黒に日焼けした梓の姿。
憂「ふーん…あんまり練習できなかったんだ」
梓「…でもないんだけど、もっと特訓するものだと思ってたのに、
海水浴とか、肝試しとか、ほとんど遊んでた」
憂「ふーん…」
梓「もっと練習したかったのに…」
でも、目の前の梓と違って、姉・唯は全然日焼けしていない。
同じ合宿に行っていた二人のこの差が気になる憂。
梓「私が一番はしゃいでたから…」
言葉を濁すように答える梓。口では文句を言いながらも、しっかり楽しんできたらしい。
その様子に、憂は笑みをこぼした。
梓「でもね…」
憂「ん?」
梓「やっぱり、行ってよかった
先輩達のいろんなことがわかったもん」
合宿で、普段の部活動だけでは知らなかった、先輩達の姿を知ることができた梓。
普段の毅然とした姿からは俄かに想像のつかない、怖がりな澪。
部長の座にありながら率先して遊ぶ律は、真面目な澪とやはり良いコンビだと思う。
部活動では見せない、少し子供じみたプライベートの姿を見せた紬。
そして──
目の前の友達、憂の姉である唯。
律と一緒に遊んでばかりで、部活中練習しているのをあまり見ないが、夜中に一人で練習するぐらい熱心なところを知ることができた。
合宿の思い出を切り取った写真を憂に見せる梓。
憂の言う「唯のあたたかさ」が、梓にも少しわかったような気がした。
次回予告
梓「う…弦錆びてるじゃないですか…
これ、いつ弦を交換したんですか?」
唯「え? 弦って交換するものなの?」
…どうやら唯さん、一年近くギターは弾いても、手入れが必要だということすら知らなかった模様。あのレスポールの運命は?
はたまた、意味深なあずにゃんの台詞の意味は?
感想
第十話は、部活動の時間でしか四人を知らなかった梓が、合宿を通して先輩たちの新しい顔を知る話。冒頭アバンタイトルと同じように待ち合わせての外出というエンディングで、同様のシチュエーションの上で、合宿前と合宿後における、梓の先輩たちに対する印象の変化を語らせている。
信仰のようなリスペクトを抱いていた澪の弱い部分、その澪と、今までなんとなくないがしろにしてきた律との絶妙なコンビネーション、大人びた穏やかさの目立つ紬の無邪気さ、天真爛漫な唯の熱い部分。エンディングで梓の口から語られるこれらの全てが、今まで彼女が見たことの無いものであり、第九話のクライマックスにおいて語られた「感動の理由」に近づく鍵になるかもしれない。
昨年度の合宿を描いた第四話は、当レビューでは「バンドになる話」と評したが、今回の第十話は「梓がバンドに加わる話」だったのかもしれない。梓が先輩達について知ったように、四人の先輩たちも梓について知ったのじゃなかろうかと思うわけだ。食事の準備や花火の片付けに見られるような、小さな仕事でも率先して取り組む性格、本当に楽しいときは食事のときのような笑顔を見せたり、夜中の練習に付き合うような世話焼きなところなど。あの四人がそうしたことに気づいていないはずが無い。