【読了】オースン・スコット・カード「エンダーのゲーム」 / Orson Scott Card's "ENDER'S GAME"

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

本当はもっと早く読み終っている予定だったのだが、その他色々に気をとられているうちに遅れに遅れまくって本日読了。


理由はどうあれ、どのような意図であれ、そして導き出される個々の結論がどうあれ、現在の情勢と価値観の元で再評価されるべき作品ではないかと感じた。
たとえばこんなニュースがあったりして、本来どうあるべきかはともかくとして様々な論調があり、望むか否かに係わらず業界がその動向に注目せざるを得ない世にあって、改めてこの作品を評価したならばどのように受け取られるのか、一応その業界に身を置く者としては興味深かったりする。


戦争を模したゲームであったはずのものが、実はゲームを模した戦争であったという結末。

ゲームの中での殺人が現実の殺人をも引き起こしていると信じる大人たちが、過剰なまでに神経を尖らせている現代と対称的に、作品中では人類の共通の敵に対抗しうる頭脳と独創性を持ちながらいささかの殺戮をも望まぬ十一歳の少年に、大人たちはゲームを与えるふりをして戦場の指揮をとらせ、敵である異星生命を根絶やしにさせてしまうのだ。この対称性は不謹慎な言い方かも知れないが、実に面白い。


この作品はもちろん小説であり、小説であるがゆえに虚構にすぎない。
しかしその28年前に書かれ、20年前に長編として再発表された虚構が、現在のある現実との間にこれほどまでの対称性をみせていることが興味深いと思える。