ついでにXbox360が日本で売れない理由を復習してみた。

まず、先代Xboxが売れなかった二つの要因を挙げてみる。

一つ目はXboxアメリカンな大味さ─極端に言えば「格好悪さ/ダサさ」─をひたすら漂わせていたこと。よくいわれるあの大きさ、置き場所に困るデザイン、DVDに傷がついても気にしないアバウトな作り。コンパクトでシャープで合理的な商品を好む日本のユーザの食指が動こうはずもない。比較対象となるものがある場合はなおのこと第一印象が悪い。

んで二つ目にして最大の理由は「欲しいと思わせるタイトルの密度があまりにも低い」。そもそも日本でリリースされたタイトルが少ないし、その中に日本国内で大きな市場を占めるジャンルのタイトルがほとんど無い。それがある程度あれば、あのダサさや価格を押しても「欲しい」と思わせることが出来ただろうけど、画面ヅラ一つとってもアメリカンな「バタ臭い」デザインのゲームばっかり。DOAのようなタイトルもあったけど、あれだけのためにあのダサい機体を購入する気にはなれまいて。


Xbox360で、上記二点の問題がどれだけ解決されたかといえば全く解決されてないw
日本人が評価するハードのデザインってのは、本体形状だけでなくて周辺に繋ぐもの全てを包括したものだったりするから、あの馬鹿でかい電源ユニットは論外だし、以前に比べればシャープになった(電源を外に追い出しただけだがw)本体デザインも、PS2がDVDケース大になったご時勢にあの大きさはないだろうと。
日本での同時発売タイトルの少なさもやる気の無さを感じさせるだけだし、その後に控えている「大型タイトル」として喧伝されているものも、それだけでユーザが買ってくれるものじゃない。「キラータイトル」ってのは、それを遊びたいがために買ったとして、それが終わった後も楽しく遊び続けられるだけの周辺タイトルラインナップがあって、初めて起爆力として機能する。爆弾にたとえるならばいわば「信管」であり、信管が火花を散らしても爆薬がなければ爆発しないのと同様、片手の指で足りる程度の大型タイトルがあったとしても、それが終わった後、周辺の「程よく楽しめるタイトル」で遊びながら次のキラータイトルを待つことができるという期待が持てないプラットフォームを、一体誰が買うというのだ!? 凡庸なタイトルにはそういう存在意義があるのだ。Xbox360でリリースされているタイトルは、日本では凡庸とすら見なされないか、国内の開発者による凡庸以上のタイトルでも、本数が少なく多様性に欠けるラインナップでは、遊び続けられるユーザは限られてくる。

俺が思うに、MicrosoftXbox360の日本市場戦略を練るにあたって、まず日本独特の「かわいい」という感覚を肌で知り、理解するべきだったと思うんだな。その感覚を身につけて、ソフトもハードも「かわいい商品」を作ることが出来なければ日本では売れない。

一つ目の問題を解決するための、日本で「格好よい」と思わせるコンパクトでシャープで合理的なデザインは「かわいい」印象を与える。米国製品であってもiPodが受けている理由はそれだな。

二つ目の問題である、日本人に「欲しいと思わせるタイトル」は、画面ヅラから日本人好みにしなきゃ。ゲームを買う前にユーザが手にする事前情報の9割近くは画面写真によるものであり、そこで見えるデザインでユーザにアピールできなきゃ「欲しい」なんて思ってくれないのは全世界共通。違うのは、何を「欲しい」と思うかだ。日本国内タイトルでは「リッジレーサー」などの「カッコイイ」系デザインのドライビングシミュレーションですら、そのデザインにはどこかしら「かわいい」ところがある。メジャータイトルであるRPGのキャラデザイン一つとっても、コミックやアニメの影響をうけた、何がしかの「かわいい」ところをもったものが多い。最もメジャーなRPGのデザイナが漫画家であるのは周知の事実*1。ギャルゲーなどに至ってはもはや言うまでもなく「かわいい」デザインを最前面に押し出したジャンルであるし、それが一つの市場を築いていることは一考に価する。そういった「かわいい」を秘めた、日本人が「少なくとも凡庸と見なしてくれるタイトル」を多種多様にそろえた上で、坂口氏のような人を客寄せパンダにして、「このハードには(俺たちが)面白いと感じるタイトルが集まってきそうだ」という雰囲気を作ることができたならばまだ日本市場での成功は見込めるのだが、客寄せパンダはいても周辺の土壌が枯渇している有様ではその先の期待が持てない。


某漫画の売り文句みたいだが、日本においてかわいいは正義なのだ。


Microsoftが日本市場の一体何を研究したのか理解に苦しむ。韓国のゲーム業界人のほうがよっぽど日本の「かわいい」を知っている。彼ら自身が日本の「かわいい」を持った漫画やアニメで育っているからだとは思うが、肌でその感覚を理解しているのだ。韓国発のオンラインゲームが日本市場でも猛威を振るっているのはその証といえる。

*1:ドラクエ鳥山明氏のことね