あの時、あの人がこう言ったのを思い出す。

時期的に5〜6年前だったはずだ。

当時の職場だった部署が恵比寿にあった頃、携わっていたプロジェクトのトップ(わかる人はわかるだろうが、非常に有名なあの方だ)が、私にこんなふうに話してくれたことがある。

「批判や文句っちゅーのは、作品に対するお客さんの愛や」

情けないことに、その時の私にはその言葉の本当に意味するところが理解できなかった。それまで小さなデベロッパーで、クライアントの意向を受けての仕事ばかりを担当し、卑屈になった挙句数年の無職時代を経て、生活上の必要から業界に復帰したばかりだった当時の私は「ユーザーなんて文句ばかり言って、面白いものを口あけて待ってるツバメのガキみたいな奴らだ」などと思っていた傲岸不遜な奴だった。だからその時は、その言葉にも若干の反発を覚えた。


もちろん当時からずっとそうというわけではなくて、今日に至るまでの過程の中で、おぼろげながらにその意味をつかんできてはいた。

そして今ではもちろん、その言葉の意味するところがはっきりとわかる。
それは実際に自分の携わる作品で遊んでいる人たちが、遊んでいるものにどんな想いで批判や文句を口にしているのかを知り、その想いを仲間として共有する機会を得たから。


自分でも進歩の遅い奴だとは思う。
でも進歩が無いよりは、あったほうがずっといいに決まっている。


確かに色々とボロボロだ。


でも、大事なものを教えてくれた仲間と出会った場所だから、私はあのゲームが大好きだ。